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【2018年版】世界のコワーキングスペーストレンド

[October 24, 2018] BY Kazumasa Ikoma

今年もdeskmag社による世界のコワーキングスペースの最新レポートが9月に発表された。これは同社が2011年から毎年行っているオンライン調査の結果報告レポートで、世界全体のみならず各地域の現状も読み取れるコワーキング業界最大の調査である。今年は2017年11月8日から2018年1月30日までの86日間、計1980人(コワーキング運営側1172人、ユーザー591人、コワーキング運営予定116人、前ユーザーもしくは利用経験ゼロが101人)から回答を得た。

調査の結果を見る限り、ワークスペースの拡大を積極的に行い、より多くのメンバーを確保するというここ数年の傾向が今年も見られたが、詳細を見ていくとより細かな変化が見えてくる。今回は、このdeskmagによる調査結果を中心に2018年の世界のコワーキング市場における5つのポイントを見ていきたい。

1. 前年比でメンバー数は10%増、デスク数は20%増

2018年のコワーキング業界はメンバー数、デスク数、スペースの広さですべて増加傾向が見られた。この背景には、WeWorkのようにスペース規模と収益が比例する業界の強い傾向が露わになった中で、スペースの拡大、他ロケーションへの展開を積極的に行うコワーキング企業の動きに利便性を感じられたユーザーが増えていった、という流れが考えられている。実際に調査内で、200人以上のメンバーを持つ大型コワーキングスペースの80%は収益を挙げているという特徴が明確に表れている。

deskmagの資料。2000スクエアフィート(約185平方メートル)以上の面積を持つ大型コワーキングスペースの割合が増えていることがわかる

調査に回答したコワーキングスペースの約3分の2が2018年に拡大を計画中、30%超が最低1ヶ所新たな地域への展開を考え、スペースは平均で70%拡大する見込み。中には展開ではなくコワーキング拠点自体を移転するところもあるが、その最大の理由にはスペースの足りなさが挙げられており、積極的に規模拡大の戦略を行う企業の姿勢が強く見える結果となった。

以下はStatistaによるコワーキングユーザーの推移。2018年のコワーキングユーザー数は2015年のユーザー数の2倍以上と予想されており、今後も成長が期待できる。

関連記事:サンフランシスコの歴史的建物で起こすコワーキングイノベーション – FOCUS Innovation Studio

2. 大都市から地方への展開はあるか

回答したコワーキングスペースの40%は人口が100万人以上の大都市にスペースを構えていると答えたが、この割合はここ2年間でさほど変わっていない。注目すべきはスペースの数で、コワーキングの全体数が前年比で20%以上上昇、今年初めて大都市に平均50のコワーキングスペースがあるとの調査結果が得られた。その他にも、人口が10万人から100万人規模の都市でもコワーキング数の増加傾向が見られている。

一方、人口10万人以下の都市のコワーキング数は減少傾向にあるという。2010年からの調査で今回初めて減りを見せ、平均の競合企業数は1社に満たない程度、つまりこのような小規模都市にはコワーキングが1つある程度となっている。

こう見ると大都市のおけるコワーキングの飽和状態が懸念されるが、まだその心配には及ばないとdeskmag社は綴る。調査結果では、50万人以上の都市に存在するコワーキングスペースの25%が数が多すぎると回答しているが少数派に過ぎず、実際に全体回答者の60%は程よい数と答えている。そして22%がまだコワーキングが足りていないと回答している。今後は中堅都市やまだサービスが行き届いていない小規模都市でのコワーキング数に機会が見られそうだ。

3. 大都市を中心にプライベートオフィスが人気

今年も右肩上がりの成長を見せるコワーキング業界だが、今年はプライベートオフィス(他メンバーとの共用ではなく、自分もしくは自社用のスペースとして借りる個人オフィス)に対する人気の高さが顕著に見られた。下にあるグラフにある通り、コワーキング総収入におけるプライベートオフィスの割合は前年比で9%アップの27%となっている。この収入増加の傾向はスペースの拡大スピード以上に進んでいるという。デスクは1人専用ではなく複数人で使われることが多く、多くのユーザーがプライベートオフィス内でのフリーアドレスデスクとして活用しているようだ。

「Renting Private Offices」(青い部分)の占める割合が2018年で増えているのがわかる

一方、ミーティングスペースやイベントスペースは収入の一部として変わらずコワーキング事業の支えとなっているが、スペースの大きさは減少傾向にあるという。近年一部のコワーキングスペースによる規模拡大の動きが見られるが、増えるスペースはほとんどプライベートオフィスに割り当てられているようだ。

この傾向から「プライベートオフィスが主となるスペースを果たして本当にコワーキングスペースと呼んでいいのか」という議論が今起きている。コワーキング本来の目的は自然偶発的な出会いを目的に他人と顔を合わせて交流・協業を促すこと。しかし今ではそういったコミュニケーションをコワーキング運営会社の提供するアプリ等で行うことが可能になっており、コワーキングの形態は今少しずつ変化しつつある。

今年の調査では、回答したコワーキングスペースの10分の1が60%以上のスペースをプライベートオフィスにすでに割り当てているとのこと。逆にプライベートオフィスを持たず、あくまでオープンスペースを重視するというコワーキングもまだ存在するが、その割合は前年で全回答者の40%だったのに対し、今年は25%程度と明らかな減少が見られている。今後コワーキングのおけるコラボレーションがどのように形で促されるか、引き続き注目が必要だ。

4. 約3分の2が「サイドビジネスとしてのコワーキング」

スペースの大きさ・多さ、メンバー数、収益が強く比例関係を持つコワーキング業界において、持てるスペースに限界のあるコワーキング企業は軌道に乗るまで苦しい時間を過ごすことになる。そのためか、回答者3分の2近くがコワーキングをサイドビジネスとして運営していると答えた。

例えば、メインの事業用に賃貸料を下げてオフィス環境を自社社員に提供、コラボレーティブスペースで自社内や他企業との協業を促すことができる。また親会社があれば彼らができない生産性の高い労働環境を特別に用意する、といった立ち位置で子会社がコワーキング事業を行うことも可能だ。このような場合、コワーキングの運営は赤字を出さない限りある程度の結果を残しながら継続することができる。実際に調査に回答したパートタイムのコワーキング運営者の25%はこのような方法であれば必ずしも利益を出す必要はないと答えている。

5. 大企業によるコワーキング利用が加速

以前の「アメリカの企業がオフィス移転先を選ぶときの3つのポイント」記事でも紹介したが、大企業によるコワーキングスペースの利用はますます加速している。このような動きはWeWorkの長期戦略とも絡んでおり、同社は以前のMicrosoft以外にもGE、Dell、Sales Force、HSBC、Deutsche Bankといった企業のオフィスの1つとしてスペースを提供している。WeWork最大となるアメリカ、カリフォルニア州マウンテンビューのオフィススペースもFacebookが独占する予定。この他にも18ヵ国165のロケーションの立地を武器に、WeWorkは国外展開を行う企業とのグローバルパートナーシップ提携を積極的に進めている。

Facebookが入居予定のマウンテンビューのWeWork(写真はNew York Business Journalより)

関連記事:Facebookマウンテンビューオフィスのカフェテリアが禁止に(企業カフェテリアが禁止に?巨大テック企業従業員も困惑の事情とは

CNBCのインタビューに回答したWeWork広報の話によると、2016年7月から2017年7月の1年間でWeWorkを利用する大企業(エンタープライズ)の数は90%上昇、大企業に勤めるメンバー数は360%上昇したという。この急激な数字は今後も顕著に見られると思われる。

まとめ

今回の調査結果から、コワーキングサービスが今も拡大し、またユーザーが少しずつ増えていることで、現代の働き方にコワーキングがより浸透していることがわかった。今回の記事は世界的なトレンドを反映したもので日本でのトレンドとは別になるかもしれないが、それでも日本もこの流れを多少受けることになるかもしれない。コワーキングが今どのようなサービスを提供しているのか、どれほど使いやすいのか、自らの働き方と相談しながら利用を検討してみて良いのかもしれない。

関連記事:
シェアオフィス、コワーキングスペース…4つの違い分かりますか?働き方改革に有効なオフィス比較!
世界のコワーキングスペース 8つの最新トレンド(2017年)

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この記事を書いた人

Kazumasa Ikomaフロンティアコンサルティングにてリサーチャーを務める。アメリカ・サンフランシスコでオフィスマネージャーを務めた経験をもとに、西海岸のオフィスデザインや企業文化、働き方について調査を行い、人が中心となるオフィスのあり方を発信していく。

    

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