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コロナ禍で移り変わるワーカーの意識。2021年、働く環境に求められることとは

アンケート調査により明らかになった働く人々の意識に注目しながら、2021年における働き方の広がりと、その舞台となる働く環境について考える。

パンデミックの長期化で変わりゆく企業の意識

2021年1月7日、新年明けてまもなく発令された緊急事態宣言は、2月2日に3月7日までの延長が表明された。前年の自粛活動で得た感染抑制への期待と、稼がなければ生活できないという切実な問題が今も混在している。働き方、経済活動ともに以前のような形に戻っていく動きも見られたが、ウイルスによって引かれた手綱はなかなか緩みそうにない。

このような状況下、各企業は「その場凌ぎではなく、事業継続の観点から長期的な取り組みになる」と、以前にも増して対応の重要性を認識していることだろう。そして、そのような目線で考えているのは企業組織だけではない。

「働き方」を意識しはじめたワーカー

2020年12月に、Worker’s Resort編集部が500名を対象に実施したアンケート調査では、74%の人が「新型コロナウイルスの流行がこれからの働き方について考えるきっかけになった(現在学生の方については、就職後)」と回答している。これまでワーカーは、国や企業が取り組む働き方改革に牽引される立場だったが、取り組みへの意識はワーカー側にも移行しつつあるようだ。

コロナ以降の働き方

こうした現実を見ると、企業としてはワーカーの意識変化もしっかり押さえておきたいところ。そこで本記事では、今回の調査で明らかになった「働く人々の意識」に注目しながら、2021年における働き方の広がりと、その舞台である「働く環境」について考えていきたい。

調査概要
「働き方の広がりによる価値観の変化に関する調査」
調査手法 ウェブアンケート調査
調査対象 ①性別:男女 ②年齢:20〜59歳 ③居住地:全国
サンプル数 n=500(社会人300s・学生200s)
調査年月 2020年12月

「働き方」が企業選択軸の三番手に

まずは、「企業選択軸に関する意識」についてお伝えしたい。これまで企業は、「事業内容や担当職務をベースとした仕事内容」、「給与などの待遇面」、「経営者や先輩社員といった人」、「企業文化」などで求職者に組織の魅力を伝えてきた。では、それぞれの魅力は求職者にどれくらい響いているのだろうか。そこで、以下のような問いを設定した。

就職時の優先事項

ここで注目したいのは、1位の「事業や、自身が担当する仕事の内容」(36.8%)、2位の「給料や賞与・退職金」(31.4%)に次いで「働き方(自分の生活にあった働き方が実現できるか)」(15.4%)が3位になった点だ。これまで画一的だった働き方に選択肢が生まれたこともあってか、生活にフィットした働き方を望む声があがっている。

企業は人材獲得に向け、日々創意工夫を凝らして採用活動を行っているが、今後は働き方に関する取り組みもポイントになってくるだろう。また、社会人と学生では「働き方」に関する意識も若干異なる。採用活動の中でも新卒採用については、より「働き方」を魅力的に見せていく必要がありそうだ。

これまで本メディアでも取り上げてきたオフィスデザインは7位となった。だが、オフィスは、組織の魅力を伝えていく媒体としてはもちろん、企業がオーナーとして整備するファーストプレイスであることに変わりはない。これまでの役割に加え、今後は働き方との接続がより重要になるだろう。

求められる「就業時間の融通性」

働き方へさらに焦点を絞ると、「就業時間の融通性」が1位で40.6%を占め、現時点においては時間に関するニーズが高い様子がうかがえた。通勤や移動に要していた時間を有効に活用できるようになった経験が、時間に対するワーカーの意識をより高めたのかもしれない。

働き方で大切なもの

一方で、テレワークなど、感染予防策として多くの企業が実施中であろう「就業場所の融通性」については17.8%となり、「雇用形態の多様性」(19%)を下回った。また、次のグラフにもあるように、新型コロナウイルス終息後の働き方について問う質問では「ほぼ毎日オフィスに通いたい」を選択した人が63.7%を占めている。これらのことからも、急に強いられたテレワークにより浮き彫りとなった、コミュニケーションの不便さやつながりの希薄化といった課題がいまだ解消しきれておらず、オフィスを就業環境の最適解として位置付けている人が多いと見られる。

コロナ終息後の働き方

通勤移動に関する利便性や柔軟な環境の整備、あるいはオフィスコストの削減を目的に、在宅勤務や、シェアオフィス・コワーキングオフィスといったフレキシブルオフィスを活用したオフィス分散化を検討している企業は多い。しかし、そのような中でも、ワーカーの声に耳を傾けながら、バランスよく段階的な施策を行っていくことが大切と言えよう。

oVice

バーチャルオフィスとして利用できるoVice(画像はoViceのウェブサイトより)

昨年から利用ユーザーが急増している「oVice」や「Remo」といったバーチャルオフィスは、メールやチャットにはないリアルタイム性に加え、現在不足している「雑談」を可能とする遠隔コミュニケーションツールだ。このようなツールをリアルの場とあわせて検討していくのも一つの手だろう。

長い目で考えるライフイベントと居住地

企業選択軸に続いて注目するのは、「暮らしに関する意識」だ。ライフイベント(結婚・出産・育児・介護など)と働き方に関する設問では、「ライフイベントにあわせて、都度働き方を変えたい」(34.8%)が「ライフイベントに関係なく、できる限り同じ働き方でいたい」(23.2%)を上回る結果となった。

これまでは、そもそも働き方の選択肢が多くなかったために、生活と仕事を天秤にかけながら何かを妥協するシーンも多く見られた。今後、選択肢が広がっていくことで、ライフイベントに応じて働き方を選ぶ人が増えていくと思われる。

ライフイベントと働き方

将来の居住場所

また、将来の居住場所について尋ねた「就業場所や就業時間の融通がきくようであれば、将来的に現在の住居から引っ越したいと思いますか? または、それが実現できるようになって引っ越しましたか?」という設問(社会人300名が対象)については、「はい」と答えた人が35%を超えた。

就業環境を短期的に変えられるかは勤務先の制度次第であり、その選択肢がない場合は、転職という判断が必要になることもあるだろう。しかし、サービスやインフラなどの環境が整えば、職場や仕事内容を変えずとも居住地を変更できる可能性は出てくる。それを見越して、長いスパンで暮らしの変化に期待を抱くワーカーも一定数いそうだ。

GREENWORKHAKUBA

長野・白馬で行われているリゾートワークプログラム「GREEN WORK HAKUBA」(画像はGREEN WORK HAKUBAのウェブサイトより)

旅行会社や各地域はワーケーションの可能性に期待し、企画に創意工夫を凝らしながら供給に向けて力を入れている。ステイケーションやブリージャーなど、ワーケーションも解釈によって細分化が進んでいるが、新規場創出や学習などの目的とあわせて将来の暮らしの擬似体験としてワーケーションを活用してみるのもおもしろそうだ。

ワーカーが考える組織と個人の優先度は?

最後は、「組織と個人の関係意識」に触れておきたい。働き方の広がりにより、個々の尺度で生活と仕事の境界線が引かれるようになると、個人と組織との関係も複雑多様になっていく。現在、ワーカーは、個人と組織をどのように位置付けているのだろうか。まずは、個人都合と組織都合の優先度について聞いてみた。

これからの働き方で大切なこと

「どちらも同じぐらい大事だ」または「その時の状況によって優先すべきものを判断する必要がある」と回答した人があわせて約6割を占めた一方で、約4割の人が個人都合または組織都合を優先すべきだと回答した。

様々な状況に対応するためには、都度状況にあわせることやバランスの取れた判断をすることが大切と考える人は多い。しかし、組織の中には様々な価値観が混在している事実も忘れてはならない。自身の考えに加え、他者の考えも尊重することが肝要だ。

評価制度の志向と就業環境

次いで職場の評価に関する設問では、現在の評価と希望する評価で、「能力主義」、「年功序列」、「努力主義」に差異が見られた。

職場での現在の評価

職場に希望する評価

また、興味深かった結果の一つとして、前述した個人都合と組織都合の優先度に関する意識によって、評価に対する志向の違いも見られた。

個人都合と組織都合の優先度に関する回答を、組織優先グループ(絶対にorどちらかというと、組織の都合を優先と回答したグループ)、バランスグループ(どちらも同じくらい大切だ、またはその時の状況によって優先すべきものを判断する必要があると答えたグループ)、個人優先グループ(絶対にorどちらかというと、個人の都合を優先と回答したグループ)の3つに分け、それぞれの評価に対する志向を比較した。

すると、組織優先グループは成果主義、バランスグループは努力主義、個人優先グループは能力主義と職務主義を推す傾向が見られた。全体、社会人、学生という3通りの比較でもほぼ同様の結果となっている。

職場での評価に対する志向

職場での評価に対する社会人の志向

職場での評価に対する学生の志向

※背面が黄色の項目が、各グループにおいて平均値(水色文字)を超え、かつ上位2番目までに該当したもの。

就業環境によっては、評価者の適切な評価が困難になる、評価内容の納得感を得ることが難しいといった評価指標もある。組織がどのように評価したいかに加えて、ワーカーがどのように評価されたいかという雇用(または関わりを持ちたい)人材の価値観も意識する必要があるだろう。企業はこうした事実を踏まえて、評価制度の整備や働く環境の構築を考えていかなければならない。

包括的にワーカーの体験価値を向上させることが大切

今回はアンケート調査の結果から、「企業選択軸」、「暮らし」、「組織と個人の関係」という3つのワーカーの意識について触れた。

環境変化対応のためのフレキシブルな施設構築や、目的意識の高いオフィス作りなど場所に関する議論が進みがちだが、今後ワーカーが活動する場はオフィスの中だけにとどまらない。ワーカーの意識を注視しながら、オフィス外の活動や暮らしにも目を向けて、働く環境として包括的にワーカーの体験価値を向上させていくことが、これからの企業と個人のサステナブルな関係や働き方につながっていくのではないだろうか。

この会社で働きたい。この会社に関わってみたい。そう感じてもらうための施策作りに、引き続きWorker’s Resortをご活用いただければ幸いである。