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<世界のデザイン>快適さと生産性を実現! デンマークの「ヒュッゲ」式ワークプレイスとは

[March 15, 2022] BY Rui Minamoto

デンマークで大切にされる、ヒュッゲとは

国連の関連機関が世界150以上の国や地域を対象に行っている、「World Happiness Report(世界幸福度調査)」。アンケートやGDP(国内総生産)、社会的支援、人生の自由度などから順位付けされるこの調査で、常に上位に入っているのがデンマークだ。

2018年~2020年の平均値をもとに算出された幸福度ランキングでも、デンマークは2位にランクインしている(「World Happiness Report 2021」より)。ちなみに、日本の順位は56位と、G7 のなかでも最下位にとどまっている。

デンマークの幸福度が高い理由として、北欧諸国ならではの社会保障の手厚さとともにあげられるのが、デンマークで大切にされている「ヒュッゲ(Hygge)」という価値観の影響だ。『日本で、ヒュッゲに暮らす』(PARCO出版)の著者であるデンマーク出身のイェンス・イェンセン氏によると、ヒュッゲに当てはまる日本語はないとのこと。説明は難しいとしながらも、「人が感じる気持ちの一つ」であり、「ヒュッゲな気持ちとは、心配事もなく心が安らぎ、心地よく時間が流れているときに感じるもの」だと同著書で語っている。

ここで、World Happiness Report 2021について改めて見ていきたい。同レポートは、特に新型コロナウイルスの流行と幸福との関わりに焦点を当てている。パンデミックの影響下にあった2020年と、それより前の2017年~2019年の順位を比較した調査もあるが、上位にランクインしているのは同じような国だった。

デンマークにおいても、2017年~2019年の順位は2位、2020年は3位と、大きな変動は見られない。それぞれの国で事情は異なるが、デンマークではヒュッゲという普遍的な価値観が、非常時にも変わらない幸福度の高さにつながっているのではないだろうか。

2020年版に基づく幸福度ランキング 2017年~2019年の調査との比較
(画像は「World Happiness Report 2021」より)

また、公益財団法⼈日本生産性本部が2021年12月に発表した調査によると、就業者1名あたりの労働生産性は、デンマークがOECD加盟38カ国中の7位、日本は28位だったという。幸福度に加えて労働生産性も高いデンマークに、日本が学ぶことは少なくないだろう。

OECD加盟諸国の労働生産性:2020年・就業者1名あたり/38カ国比較
(画像は公益財団法⼈日本生産性本部の「労働生産性の国際比較2021」より)

ヒュッゲ式ワークプレイスを実現するアイデア

デンマークの冬は長く、日照時間がかなり短いため、人々は多くの時間を室内で過ごす。だからこそ、部屋での時間が心地よくなるよう、ヒュッゲを追求するべく様々な工夫を取り入れている。そんなデンマークの暮らしをヒントに、手軽にワークプレイスを快適にするアイデアを紹介したい。

北欧スウェーデンの家具ブランド「IKEA」が発信するヒュッゲのイメージ例
(画像はIKEA JAPANのWebサイトより)

1. シンプルで温もりのある北欧家具を取り入れる

北欧の家具と言えば、名匠によるチェアに代表されるように、飽きのこない洗練されたフォルムと機能美が特徴だ。そして、素材には、安らぎを感じる上質な天然素材を使用することが多い。そうしたインテリアは、ワーカーのマインドにくつろぎの感覚をもたらすだろう。

また、ヒュッゲには、「本当に気に入ったものを、長く使う」という考え方も含まれる。インテリアを選ぶ際には、長く使い続けられるような質の高さ、機能性、シンプルさも重視したい。

2. 照明や草花でヒュッゲを演出する

親密でリラックスした雰囲気をもたらすことから、デンマークでは照明にロウソクやランプを用いることが多い。安全面などへの配慮から、こうしたアイテムをオフィスで採用するのは難しいが、休憩スペースの照明を落ち着く色にしたり、要所にペンダントライトや間接照明を取り入れたりすることで、ヒュッゲな雰囲気を演出できる。

デンマークを代表する照明ブランド「レ・クリント」は、LEDのポータブルランタンを販売している。このようにモダンなアイテムを取り入れるのも一案だ。また、観葉植物を置く、デスクに草花を飾るといったさり気ない工夫も、オフィスに心地よい空気をもたらすだろう。

(画像はレ・クリントのWebサイトより)

ヒュッゲな空間をつくろうと時間や手間をかけすぎて、負担がかかってしまうのは本末転倒だ。
ヒュッゲを演出するアイテムを用いて、ワークプレイスの一部にほっとする、安心できるような空間をつくるだけでも、快適さは変わってくるのではないだろうか。

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ヒュッゲを取り入れたワークプレイス事例

近年、日本でもヒュッゲの要素を取り入れたワークプレイスが見られる。ここでは、2つの事例をもとに導入のヒントを探りたい。

1. コミュニケーション性とリラクゼーションに配慮:株式会社KDDIエボルバ

KDDIグループで培ったノウハウに基づき、コンタクトセンターを中心としたBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業などを展開する、KDDIエボルバ。同社の名古屋事業所は2017年に、休憩室を「ヒュッゲ」と名付け、ほっこりとくつろげる空間にリニューアルした。

リニューアル前は、長机に椅子を並べたスタイルで、会議室のように無機質だった休憩室。同じテーブルに、食事をしている人と睡眠をとっている人が混在するなど、心からくつろぐことはできなかったという。そこで、窓側のカウンターに一人席を配置したほか、ファミリーレストランのようなソファ席や、ハイカウンター席、マッサージチェアなど、様々なタイプの机や椅子を設置。レイアウトを変更しやすいテーブルや椅子を用い、「真のくつろぎ」の提供を目指している。

リニューアル前の休憩室
(画像は株式会社KDDIエボルバの公式ブログより)

リニューアル後の休憩室
(画像は株式会社KDDIエボルバの公式ブログより)

座り心地を重視した一人掛けソファのほか、天井や壁に施されたインテリアグリーンなど、リラックスにつながる工夫を採用。休憩室という、従業員がくつろぎを目的に使用するスペースにヒュッゲを取り入れ、コミュニケーション性とリラクゼーションに配慮した空間づくりを実現している。

2. 「暮らすように働く」で生産性アップを目指す:株式会社ボーコンセプト・ジャパン

デンマークのインテリアブランド「BoConcept(ボーコンセプト)」を日本で展開する、ボーコンセプト・ジャパン。同社は2020年、先進的なオフィスづくりを審査・表彰する第33回日経ニューオフィス賞で「ニューオフィス推進賞」を受賞した。

これは、「HYGGE OFFICE(ヒュッゲ・オフィス)」をコンセプトにした、東京・青山にある本社のオフィスづくりが評価されたもの。同ブランドが提案する「暮らすように働く」空間を実現しつつ、限られた面積のなかで従業員満足度の向上と法人事業の売り上げ増加を目指したという。

具体的には、オフィス家具と住宅用家具をミックスして配置し、オフィスとしての機能と在宅時のような快適性を両立させた。特に注目したいのが、ソファエリアを広く確保した執務スペースだ。背もたれに高さのあるソファを採用し、家具を向かい合わせることで、オープンでいながらもパーテーションで囲われたようなクローズドな空間をつくり出している。在宅勤務の居心地のよさを実感したワーカーには、魅力的なスペースとなるだろう。

(画像は株式会社ボーコンセプト・ジャパンのプレスリリースより)

また、ユニークなのは、オフィスが法人の顧客向けのショールームも兼ねており、スタッフが日常的に使用する様子を「LIVE OFFICE」として開放している点だ。同社は、これらのオフィスづくりを導入した結果、業績面および社員のモチベーションにおいて以下のような改善があったと報告している。

・組織全体の生産性が14.1%上昇
・社員対象のアンケートで90%が「現在の仕事にやりがいを感じる」と回答
・法人部の売上が前年比約300%上昇

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スウェーデンの休憩術「フィーカ」にも注目

今回は、デンマーク発のヒュッゲという価値観をワークプレイスに活用した事例を紹介した。北欧諸国には、ほかにも興味深い習慣が多くある。その一例が、スウェーデンで大切にされている文化「fika(フィーカ )」だ。

フィーカとは、お菓子を食べながらのコーヒーブレイクのことで、スウェーデンでは勤務中を含めて一日に数回フィーカの時間を設けることもある。2018年~2020年の平均値をもとにしたスウェーデンの幸福度ランキングは7位、2020年の就業者1名あたりの労働生産性はOECD加盟38カ国中11位と、いずれも日本の順位を上回っているが、このような文化も業務のメリハリやストレス解消に寄与しているのかもしれない。

世界にはこのように、無駄を削るだけではない働き方改革もある。今後もユニークなワークプレイスをめぐる状況をリポートしていきたい。

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この記事を書いた人

Rui Minamoto 女性誌のインタビューから経済誌の書評欄まで、幅広いテーマの取材・執筆を担当。近年は、広告・PRプランナーとして消費者インサイトの発掘や地方若者議会で「広報力養成講座」の講師も務めている。



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