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どれも個性的!2022年にインテリア・アワードを受賞した世界のオフィス

記事作成日:[September 19, 2023]
/ 記事更新日:[September 18, 2023]
BY Naoko Kurata

インテリア・アワードを受賞した世界のオフィスを紹介!

世界中のさまざまな団体が、建築やインテリアデザインに対する独自のコンテストを実施している。そうしたアワードでは「オフィスデザイン部門」が設けられていることも珍しくない。

いま世界では、どのようなオフィスデザインが注目され、評価されているのだろうか。この記事では、2022年度に実施されたアワードのなかから、オフィスデザインに関する賞をピックアップし、受賞オフィスを紹介したい。

【①The best workplace design of 2022】Hana Bank Headquarters(韓国)

まずはじめに紹介するのは、アメリカのビジネスメディア「Fast Company」が実施したコンテスト「The best workplace design of 2022」。Fast Companyはテクノロジーやリーダーシップ、世界を変えるアイデアなどに重点を置いたビジネスメディアだ。

そんな最新のオフィスデザインにも嗅覚がはたらきそうな同メディアが実施した「The best workplace design of 2022」で大賞を受賞したのが、韓国の銀行Hana Bank の本部オフィスである。

流線型のデザインが目をひくHana Bank Headquarters
(画像はNBBJのWebサイトより)

設計を手掛けたNBBJは、人々が職場に到着したときよりも良い気分で職場を去ることができるような「回復力のあるオフィス」をめざして、このHana Bank Headquartersを設計したという。

各階をつなぐスロープが折り重なるリボンのようで美しい
(画像はNBBJのWebサイトより)

建物内・外ともに流線型のデザインが特徴的だ。各階はスロープでつながれており、新鮮な空気や日光を感じながら移動できる。人々が行きかうことで、インフォーマルなコミュニケーションを促している。

緩やかなスロープが幾重にも重なり、屋上まで続いている
(画像はNBBJのWebサイトより)

コロナ禍を経て、オフィス環境が従業員のウェルビーイングに与える影響について、より意識されるようになっている。Hana BankおよびNBBJは「回復力」というキーワードで、ワーカーの健康や働きやすさへの取り組みを表現しているのだ。ビジネスメディアであるFast Companyが大賞に選んだのも納得のオフィスである。

関連記事:瞑想ルームにデジタル森林浴も。社員のウェルビーイングを促すオフィスの新潮流

【②The Australian Interior Design Awards】Multiplex Head quarters(オーストラリア)

次に紹介するのは、オーストラリアのデザイン業界を代表する専門機関・オーストラリアデザイン協会が2004年から実施している「The Australian Interior Design Awards」だ。応募はオーストラリアを拠点とするデザイン専門家に限られるが、プロジェクト自体は場所を問わない。

その2022年度「ワークプレイスデザイン賞」を受賞したのが、Multiplex Head quartersである。Multiplex社は約60年の歴史をもつ建設会社であり、カナダ、イギリス、中東にオフィスを構え、世界で大規模プロジェクトを展開するグローバル企業だ。

むき出しのコンクリートが建設現場を想起させるMultiplex Head quarters
(画像はBVNのWebサイトより)

このオフィスを設計した建築デザイン会社BVNは、Multiplex社の「can do」というカルチャーに焦点を当て、「ダイナミックでエネルギーに満ちた職場を設計すること」に注力したという。

無機質なメタルと温かみのあるウッド素材を取り合わせた洗練された空間
(画像はBVNのWebサイトより)

むき出しのコンクリート梁やスチール管で、建設現場の素材感を再現し、建設業界のイノベーターとしてのMultiplex社を表現している。一見すると無機質でひんやりとした印象だが、適宜取り入れられているウッド素材のドアやテーブルが温かみを加えている。

アワードの選考委員もこのデザインを「堅牢な素材を使用することで、企業が活動する都市空間を巧みに表現しており、Multiplex社のブランドイメージを忠実に反映している」と高く評価している。

関連記事:オフィスにおける「ウッドデザイン」の効能は? 木を生かした建築、家具、サブスク事例

【③WORLD DESIGN RANKINGS 2022】Google Dublin Office(アイルランド)

世界中の美しく画期的な建築デザインを紹介するオンラインマガジン「designboom」も、毎年コンテストを実施している。その「WORLD DESIGN RANKINGS 2022」のInterior Space and Exhibition Design部門でGoogleのDublinオフィスがプラチナ賞を受賞した。

アイルランドの港湾エリアの真ん中にあるGoogle Dublin Office
(画像はEvolution DesignのWebサイトより)

GoogleのEU本部の役割も担うこのDublinオフィスは、4万7000平方メートルを超えるスペースに65カ国以上から集まった45以上の言語を話すスタッフが働いている。そんな多様なスタッフたちを象徴するように、オフィスデザインは一見、混沌としているが、不思議な統一感がある。

それはGoogleのコーポレートカラーやアイルランドのシンボルカラーである緑色をあしらっていることからきているのかもしれない。

Googleのコーポレートカラー青、赤、黄、緑を大胆に取り入れたスペース

コラボレーションやアイデア共有のために多種多様なスペースが用意されている
(画像はすべてEvolution DesignのWebサイトより)

ミーティングや会議をするためのスペースがふんだんに設けられている。ビビットなカラーと遊び心のあるインテリアに、クリエイティビティが刺激されそうだ。さすがdesignboomに選出されたオフィスだけあり、華やかさは段違いといえる。

関連記事:クリエイティビティを刺激する、海外の個性的なオフィス5選

【④BIG SEE INTERIOR DESIGN AWARDS 2022】Alcoders(アルバニア共和国)

続いては、東南ヨーロッパを中心としたデザインコンテスト「BIG SEE AWARD」から。このコンテストは、建築、インテリア、ウッドデザイン、観光デザイン、プロダクトデザイン、ファッションデザインの6部門があり、対象が幅広いところが特徴だ。世界中どこからでも応募できる。

その「BIG SEE INTERIOR DESIGN AWARDS 2022」に入賞したのが、アルバニア共和国の首都ティラナにあるIT企業Alcodersのオフィスである。デザインを担当したAngry Architectsは、Alcodersのスローガン「あなたのテクノロジーのスーパーヒーロー」をオフィスに忠実に反映させている。

スーパーヒーローの一員になれるかのようなオフィス

さまざまな場所からスーパーヒーローが目に入る
(画像はすべてAngry ArchitectsのWebサイトより)

IT企業のオフィスらしい黒を基調としたシャープなインテリアのそこここに、迫力あるスーパーヒーローたちが現れる仕掛けだ。遊び心があると同時に、企業スローガンを常に意識できるオフィスづくりに成功している。

グリーンも多く取り入れられている
(画像はAngry ArchitectsのWebサイトより)

一方で、オフィス内には自然光を取り込む大きな窓があり、緑を植樹したグリーンウォールなども取り入れられている。デザインの緩急をうまくつけているのだ。アワードの審査員も、「従業員にとって楽しくてリラックスできるオフィススペース」と評価している。

関連記事:パーパスを実現するためのワークプレイスづくり。8つのポイント
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【⑤SBID International Design Award】BEEAH Headquarters(アラブ首長国連邦)

最後に紹介するのは、権威あるインテリアデザインコンテストのひとつとして知られ、世界中からエントリーがある「SBID International Design Award」。プロダクトデザインを始めとするさまざまな審査部門があるが、そのなかの「Office Design Over 2000 SqM(大規模オフィスデザイン部門)」を2022年に受賞したBEEAH Headquartersは、従来のオフィスの概念を覆す傑作だ。

砂漠のなかにあるBEEAH Headquarters
(画像はZaha Hadid ArchitectsのWebサイトより)

オフィスのある場所は、アラブ首長国連邦のシャルジャという場所にあるアルサジャー砂漠。その外観はまるで砂丘のようなデザインだ。

内部は、砂漠の強い日差しを柔らかい自然光に変える天窓のデザインが印象的。そしてストーンタイルの床は、視覚的にひんやりとした印象を演出している。

天井から取り込まれた光が映る美しいフロア
(画像はZaha Hadid ArchitectsのWebサイトより)

BEEAHは中東におけるサスティナブルソリューションのリーディングカンパニー。このオフィスを手掛けたZaha Hadid ArchitectsはBEEAHの事業内容をふまえ、このオフィスを「ネットゼロを達成する設計とした」としている。

建物の屋根部分には太陽電池アレイを搭載。グリーンビルディング認証「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」最高ランクのプラチナ基準で運用するための次世代テクノロジーを備えた。そうした環境への取り組みも本アワードで高く評価されたのだろう。

空間を贅沢に使ったレセプションとワークスペース
(画像はZaha Hadid ArchitectsのWEBサイトより)

レセプション奥に、広々としたワークスペースが見える。天井が高く、白を基調とした明るい空間で、ゆったりとした気持ちで仕事ができそうだ。

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2022年度の受賞オフィスの共通点は?

世界的な5つのアワードと2022年度の受賞オフィスを紹介した。評価の基準はもちろん各賞で異なるが、受賞したオフィスには、その土地の風土、企業の事業内容やビジョンに合ったデザインを具体化しているという印象がある。

また、ポストコロナ時代となり、従業員が再びオフィスに集い、新しいスタイルで協働することが意識されているように感じられる。受賞したオフィスはその年の時世を反映しているのだろう。2023年以降はどのようなオフィスが受賞するのか、引き続き注目していきたい。

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この記事の執筆者

Naoko Kurata オランダ在住ライター。日本企業での宣伝部、マーケティング等を経てリビア、英国へ移住。2015年よりオランダ在住。主な執筆ジャンルは、オランダの文化や建築、タイニーハウス・ムーブメントなど。

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