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<海外事例>オフィスもサステナブルに!海外で広がる「環境配慮型オフィス」

[August 16, 2022] BY Chinami Ojiri

オフィスに求められる「環境配慮」の視点

在宅勤務や地方副業など、新しい働き方が模索されるなか、オフィスのあり方も変わってきている。オフィスの未来を語るキーワードの一つとして注目されているのが、「環境配慮型オフィス」である。

近年、国内外で環境配慮型オフィスに関する評価基準が設けられ、存在感を増している。「建築環境総合性能評価システム(CASBEE)」や「Leadership in Energy & Environmental Design(LEED)」、「WELL(Well Building Standrd)」、「B Corporation(B Corp)」など、日本でも次世代に向けた働く環境の指標として認証取得を意識する会社が増えてきた。ESG投資の視点から、これらの認証を一つの判断材料とする投資家も少なくない。

各認証は、LEEDならグリーンビルディング、WELLなら健康とウェルネスに重点を置いているなど、評価基準がそれぞれ異なるが、「環境保全」の観点は共通している。これらの認証を取得するメリットとして以下の点が考えられる。

<認証取得によるメリット>
・定量的なメリット:建設コストやランニングコストの削減
・企業価値への貢献:対外的なアピール、従業員の快適性や満足度の向上
・他のオフィスビルとの差別化:ステークホルダーからの理解、賃貸時の優位性
・コミュニティの形成:地域課題や環境問題へ取り組む企業やパートナーとのつながり

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環境配慮型オフィスの海外事例

これらの認証はあくまで指標であり、その取得が最終目的となっては本末転倒だ。環境配慮型オフィスへの取り組みは、周辺環境や既存建築、ユーザー視点など、課題とニーズに寄り添ったものであるべきだろう。ここでは、環境配慮型オフィスで先行する海外の事例を紹介していく。

1. 【イギリス】コワーキングスペース「Second Home」

起業家やイノベーター向けのコワーキングスペースであり、コラボレーションを支援する「Second Home」。2014年にイギリス・ロンドンからスタートし、現在はアメリカ、ポルトガルを含めた6拠点に展開している。

Second Homeは、環境保全と利益のバランスをとることが組織のあるべき姿と考え、開業当初から環境に配慮した空間づくりに取り組んできた。社会や環境に配慮した公益性の高い企業の証であるB Corpを取得している。

同社は、地球にポジティブな変化をもたらす選択をするべく、全拠点に一貫して、既存建築の再利用、100%グリーンエネルギー、バイオフィリア(自然とのつながり)を採用している。また、積極的にグリーンテクノロジーを利用したり、環境保全設計に長けた建築家や専門家とコラボレーションしたりすることで、環境配慮型ワークスペースの可能性を広げている。

・既存建築の再利用
CO2排出量の約40%が建築物に由来するとも言われていることから、新しい建物をつくるのではなく、既存の建物に命を吹き込み、新しく生まれ変わらせることで環境負荷を低減している。

・積極的なグリーンテクノロジーの利用
エネルギー使用量の削減に取り組むSecond Homeでは、ユニークなグリーンテクノロジーを採用することも珍しくない。ロンドンのSecond Home Holland Parkでは「bubble roof(バブルルーフ)」と呼ばれる、シャボン玉を活用した屋根のシステムを導入した。designboom magazineによると、透明シートを2層構造にした屋根の間にシャボン玉を発生させ、それが断熱材の代わりになる仕組みだ。これにより冷暖房にかかるエネルギー消費の削減につながる。

bubble roof(バブルルーフ)
(画像はSecond HomeのWebサイトより )

バイオフィリアを取り入れた施設緑化
Second Homeの屋内外は、常に多くの植物であふれている。壁やパーテーションの代わりに植栽を配置することで、視覚的な境界を設けながらも閉塞感を回避し、一体感を醸成している。さらに、換気や採光への物理的な障害を減らすことにもつながり、利用者は常に自然を感じながら働くことができる。

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Second Homeの環境配慮に対する姿勢を具現化した事例として特に注目したいのが、2019年に開設されたアメリカのSecond Home Hollywoodだ。既存建築および敷地を利用した民間開発による前衛的な環境配慮型プロジェクトとして、その規模と影響の大きさに注目が集まり、様々なメディアで取り上げられた。

ArchDailyによると、Second Home Hollywoodは、約8400平方メートルの広大な敷地に建っていた歴史的建造物「the Anne Banning Community house(アン・バニング・コミュニティ・ハウス)」を改修し、広大な半屋外型ワークスペースとしてオープンした。ワークスペース、会議・イベントスペース、レストラン、書店などを備え、約250の多様な組織やチームが入居している。

Second Home Hollywoodの建物と独立型ワークポッド
(画像はSecond HomeのWebサイトより )

また、本プロジェクトでは、現地ロサンゼルスのライフスタイルに欠かせないアウトドアに主眼が置かれ、敷地の60%を屋外、40%を屋内スペースとして構成された。計1万本以上の草木が生息するなか、透明なアクリルの壁に包まれた60戸の独立型ワークポッドが置かれている。また、Second Home Hollywoodでは、100%グリーンエネルギーに加えて再生水の利用も実践されている。敷地内の水はすべて計約14万リットルに及ぶ2つの貯水槽に集められ、敷地内で利用される。

透明な壁と植物による日陰により人工照明が不要に
(画像はSecond HomeのWebサイトより )

2. 【カナダ】建築設計事務所Prairie Architects Inc. の新オフィス

カナダのマニトバ州に拠点を置く、建築設計事務所Prairie Architects。同社は約40年にわたって環境に配慮した建築を手がけており、「サステナビリティ」は彼らのアイデンティティとして内在している。

2017年、オフィスが手狭になったことをきっかけに新オフィスへ移転した。移転先の候補としていくつもの選択肢を検討したが、場所についてはもともとオフィスのあった地区・Exchange Districtに残ることがスタッフにとって重要であると判断。歴史的な建物が立ち並ぶこの地区で、遺産とも言える古い倉庫を改造して新たな命を吹き込むことが、同社の信念や価値観を具現化するものと考えた。

また同社は、マニトバ州で最初にLEED認定の専門家を擁した建築設計事務所であり、新オフィスもLEED基準で改修を行った。そして2019年、LEED v4 ID+C(新築時または大規模改修時に、建物内の一部の内装スペースについて環境性能を評価)のプラチナ認証を取得している。

(画像はPrairie ArchitectsのWebサイトより)

(画像はPrairie ArchitectsのWebサイトより)

・利便性に優れたロケーションによるメリット
従業員の68%が徒歩や自転車、バスなど車以外で通勤しており、環境負荷が高いとされるSOV(Single Occupancy Vehicle:ドライバーしか乗っていない車)を軽減。その結果、オフィス全体でCO2排出量を年間約5656kg削減した。さらに、年間50万カロリー以上のカロリー消費にも貢献した。移転先の選定においては、「従業員の健康的なライフスタイルの実現」を支援できる環境であることも重視されたのだ。従業員はビル内のジムが利用できるほか、徒歩圏内には水辺の遊歩道や公園があり、従業員の運動機会の促進にもつながっている。

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・既存資材と家具の再利用
既存建物の内装を最大限に活用した。レンガの壁、木の床や天井などを修理し、再仕上げを行うことで、資材の94%を再利用している。また、別のプロジェクトで入手した椅子や、以前のオフィスで使用していた机や椅子、ソファ、テレビなどもそのまま利用し、結果的に61%の家具がリユース品となった。数少ない新製品も低VOC(揮発性有機化合物)やリサイクル素材など、環境に配慮したものを採用している。

・最適なエネルギー効率と水使用量の削減
新オフィスでは、省エネ効果の高いLED照明や中央空調システムを採用。年間を通じて40.9%のエネルギー使用量削減を達成している。また、節水型衛生設備システムを取り入れることで、飲用水の消費量を約43%削減した。

3. 【アメリカ】建築設計事務所Hastings Architectureの新オフィスビル「225 Polk」

2019年、アメリカ・ナッシュビルでかつて公立図書館として使用されていた1965年建設のビルが、Hastings Architectureの自社オフィスとして再生された。サステナブル建築を手がける建築設計事務所Hastings Architectureがビルを購入した当時、長い間使用されておらず、荒廃した状態にあった。しかし、長きにわたって街とともに過ごしてきた建物を地域資源として保存したいという想いから、既存建築を活かして改修するプロジェクトとして始動した。

オフィスビル「225 Polk」は、「地域社会に貢献し、都市構造を保存する」をコンセプトに、建築が持つ遺産的な価値が街の景観のなかで継続されるようにデザインされた。現在は一部、クリエイティブ分野企業向けのオフィススペースとしても貸し出されている。2021年には、LEED v4 BD+C(建物新築時および大規模改修時に環境性能を評価するグリーンビルディングの認証)のゴールド認証を取得している。

(画像はHastings ArchitectureのWebサイトより)

(画像はHastings ArchitectureのWebサイトより)

・既存建築の精密な改修作業
建物の改修にあたっては、旧公立図書館を設計した建築家の意図を尊重することを重視し、基本的な構造はそのままに洗浄と補修が行われた。例えば、ジョージア産大理石が用いられたファサードパネルは洗浄・補修され、一部はオリジナルの採石場から切り出した新しい大理石と交換された。カーテンウォールフレームはそのまま活かされ、ガラスを最新の高性能のものに交換している。

・CO2排出量、エネルギー使用量、水使用量の削減
既存の建物を再利用することで、解体による廃棄物や新築時に必要となる多大なCO2排出量の低減に成功した。また、LEED認証時には、飲用水の年間26%削減、エネルギー消費量の年間11.1%削減を実現している。

環境配慮型オフィスには、明確な問題意識とコンセプトが求められる

既存建築の利用やバイオフィリア、サステナブル素材、グリーンテクノロジーなど、環境に配慮したオフィスの構築における選択肢は日進月歩で広がっている。そうしたなかで、本記事で紹介してきた事例から読み取れるのは、環境配慮型オフィスの構築をただのトレンドとせず、環境、社会、ユーザーに寄り添った想いのあるコンセプトを設定することの重要性だ。企業には、問題解決に持続的に取り組む意識が求められる。

日本でも、2001年に国土交通省の主導でCASBEE認証が設定されるなど、地球や周辺環境に配慮した建築、空間づくりへの意識が高まっている。環境配慮型オフィスをリードする国内事例が今後、加速度的に増えていくことに期待したい。

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この記事を書いた人

Chinami Ojiri フロンティアコンサルティングで設計デザイン部に勤めた後、渡米。経験と知識を広げる為、現在はNYの美大にてインテリアデザインを学んでいる。



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