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時代は「職住融合」へ。進化する「家なかオフィス」と「街なかオフィス」

[February 22, 2022] BY Rui Minamoto

自宅を職場とすることに限界が来ている?

テレワークの浸透により、自宅で仕事をする人が増えている。在宅での仕事には、通勤時間が削減できる、育児や介護と両立しやすいなどのメリットがあり、好意的に受け止めているワーカーも多いだろう。

一方で自宅に仕事専用のスペースがなく、出社を前提に選んだ住まいを仕事場とすることに限界を感じている人も少なくない。株式会社リクルート住まいカンパニーが2020年4月に行った「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態調査」でも、テレワークの実施場所としてリビングダイニングのダイニングテーブルをあげた割合が55%と最も多く、書斎などの専用ルームと答えた割合は16%にとどまっている。

また、コロナ禍が終息した後も引き続きテレワークを行う場合、間取りを変更する意向があるかとの問いに対しては、約半数がなんらかの間取り変更を希望していた。なかでも、「仕事専用の小さな独立空間が欲しい」との回答が31%と最も多い。さらに、テレワーク実施者の24%が、現在の家からの住み替えを希望。その条件として、「今より部屋数の多い家に住み替えたい」が40%と最多で、続いて「今よりリビングは広くしたい、かつ個室数も確保したい(ただし個室は狭くてもよい)」が27%と、部屋数・個室数を重視する傾向が見られた。

(株式会社リクルート住まいカンパニーのプレスリリースより)

住み替え希望について、回答を家族構成別に見ると、子育て世帯では「周辺に大きな公園や緑地があるところに住み替えたい」を選んでいる割合がほかの世帯に比べて高かった。一方、独身・単身世帯では、「通勤利便性より周辺環境重視で住み替えたい」を選ぶ割合が高くなっている。在宅時間が増えてライフスタイルが変化した結果、住環境に求めるニーズも変わってきたのだろう。

このように、間取り変更や住み替えの希望も見られ、本調査では回答者の84%が今後もテレワークを継続したいと回答している。

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職住融合を実現する国内の事例

テレワークはしたいが、現在の自宅を仕事場にすることには限界がある。そうしたワーカーのあいだで、「職場(ワークプレイス)」と「住環境(プレイベートプレイス)」を一体化した「職住融合」のニーズが高まっている。なかでも注目されているのが、自宅の間取りの一部をオフィス仕様にする「家なかオフィス」、近隣のコワーキングスペースやシェアオフィスで仕事をする「街なかオフィス」だ。

ここでは、職住融合の観点で設計を行い、「家なかオフィス」「街なかオフィス」の要素を含む国内の事例を紹介する。

1. マンション入居者でワークプレイスを共有する「イニシア大森町N’sスクエア」

大和ハウスグループの株式会社コスモスイニシアが2021年1月に竣工した「イニシア大森町N’sスクエア」(東京都大田区、総戸数112戸)の特徴は、テレワークに活用できる「コワーキングスペース」と、家事時間の短縮に役立つ無料の「プロ仕様のランドリーマシン」が併設されているところにある。さらに、宅配型トランクルーム「sharekura(シェアクラ)」を導入するなど、共用スペースや外部ストレージのシェアによる時間・空間の効率的利用を提案している。

(画像は株式会社コスモスイニシアのWebサイトより)

コワーキングスペースにはWi-Fiが完備され、24時間いつでも利用可能。テレワークや読書での利用をはじめ、入居者同士のコミュニティ形成の場となることを意図して空間設計を行ったという。

マンションにコワーキングスペースが併設されていれば、居室の一角に書斎を設置したり、シェアオフィスを借りたりする手間やコストを省くことができる。「家なかオフィス」の進化系と言えるだろう。ワークプレイスや収納スペースをシェアできる環境は、身のまわりのものを必要最小限にしてコンパクトに暮らしたいと考えるミニマリストにとっても、魅力的な選択肢となりそうだ。

2. 仕事、子育て、地域での生活を統合した「Tote 駒沢公園」

Tote 駒沢公園」は、UDS株式会社が2019年10月、東京都立駒沢オリンピック公園(駒沢公園)横に竣工した複合施設だ。土地所有者の「駒沢公園地域のためになる土地活用をしたい」という思いを受け、企画、設計、管理を手掛けたという。

1〜2階には、地域の人々に長年親しまれてきた洋菓子店など暮らしを彩る店舗を配し、待機児童が多いという地域のニーズに応えた小規模認可保育園も開園。3階には、同社が運営するシェアオフィス&スタジオ「Tote work & studio」があり、4〜5階は賃貸住居という構成になっている。

(画像はUDS株式会社のWebサイトより)

同施設は、駒沢公園エリアの住民にとって「街なかオフィス」になるほか、賃貸住居をSOHOとして利用することも可能。SOHOとは「Small Office/Home Office」の略語で、小さなオフィスや自宅を仕事場とする働き方や、その物件のことを指す。あくまでも住むことを前提としており、税金や保険は居住用の契約となる「家なかオフィス」の一形態である。

なお、シェアスタジオは、午前、午後、夜間の3つの枠からタイムシェア方式で定期利用できるという。教室やレッスンなどを気軽にスタートできる環境を用意することで、趣味や特技のビジネスへの展開をサポートしている。職住融合の理念を、より「住(生活)」のほうに寄り添わせ、洗練させた施設と言えるだろう。

3. テレワークの環境整備と空き家問題を解決する「ご近所オフィス®」

不動産仲介業を手掛ける東京アセット・パートナーズ株式会社。同社は2021年1月に、自分だけのオフィス空間が欲しいテレワーカーと空き家をオフィスとして貸し出したいオーナーをつなぐ「ご近所オフィス®」を東京・武蔵野エリアで開始した。

(画像はご近所オフィス®のWebサイトより)

ご近所オフィス®では、同社が大家から空き家を借り上げ、テレワーク用に一部屋ずつ月単位で貸し出す仕組みを採用。対象は、空き家から半径2km以内に在住する人に限られる。一軒家の一部屋となるが、施錠ができ、安心して電話やオンライン会議も行える。借りた部屋を使用するのは契約者のみとなるため、私物を置いておけるのも便利だ。

「家なかオフィス」と「街なかオフィス」が融合したようなシステムで、利用者はアットホームな空間を、自宅から歩いて行ける範囲に持つことができる。大家にとっても、空き家のメンテナンスが軽減される、空き家が新たな収入源になるといったメリットがある。

この新たな職住融合の形は、“ご近所”という共通項を軸に、テレワーカーと大家の双方にとって課題解決になり得る点で強いインパクトを持つ。こうした形態が企業にとっても生産性向上につながることが立証されれば、“三方良し”となり、これから飛躍的に拡大していく可能性を秘めている。

関連記事:コロナ禍で移り変わるワーカーの意識。2021年、働く環境に求められることとは

家選び、街選びはさらに自由に

今回は、職住融合のなかでも「家なかオフィス」と「街なかオフィス」の概念を進化させた事例を紹介した。こうした物件やサービスを上手に利用すれば、自宅の間取りを変更したり住み替えをしたりしなくとも、快適なテレワーク環境を実現できるだろう。

最近では、勤務先の場所に縛られず、居住地を選ぶ人も出てきている。趣味のサーフィンを楽しむために海辺に移り住む、子育てがしやすい地方へ転居する、介護のために実家近くの住まいを選択するなど、家選び・街選びの形も変わりつつある。テレワークの普及を起点に変化した新しい働き方、暮らし方の今後の動向を注視していきたい。

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この記事を書いた人

Rui Minamoto 女性誌のインタビューから経済誌の書評欄まで、幅広いテーマの取材・執筆を担当。近年は、広告・PRプランナーとして消費者インサイトの発掘や地方若者議会で「広報力養成講座」の講師も務めている。



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