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都会で働き、地方で副業する。「ふるさと副業」という選択肢

[July 19, 2022] BY Rui Minamoto

増加傾向にある、副業をOKとする企業

厚生労働省は、2017年3月に決定した「働き方改革実行計画」のもと、副業や兼業を普及・促進してきた。その結果、副業を認める日本の企業は増加傾向にある。株式会社パーソル総合研究所が2021年3月に実施した「第二回 副業の実態・意識に関する定量調査」によれば、「全面容認」に「条件付き容認」も含めると、55.0%の企業が副業を容認しているとのこと。2018年の前回調査に比べ、副業を容認する割合は3.8ポイント上昇している。

企業における従業員の副業容認状況
(画像は株式会社パーソル総合研究所のWebサイトより)

一方で、現在副業をしている正社員は9.3%と1割にも満たない。企業における副業の容認自体は進んでいるものの、実際に副業に踏み出せている人はまだ多くないようだ。

副業を認める企業の増加を示すデータはほかにもある。アデコ株式会社が、日本の上場企業に勤める管理職を対象に実施した「管理職を対象にした、副業・複業に関する調査(2018年・2021年比較)」によると、直近3年で副業・複業(兼業)を認める企業は14.4ポイント増加している。

(画像はAdecco GroupのWebサイトより)

副業・複業が認められている理由について、2021年は「本人のスキルアップにつながるから」(1位)と「イノベーションや新事業の創出につながるから」(2位)との回答が上位に並んだ。それぞれ2018年には2位と6位であり、順位が上昇している。 2018年と比較すると、2021年はより長期的な視点で副業に期待が寄せられていることがわかる。

また同調査では、副業・複業の今後について、7割以上の管理職が「広がっていく」と予想していることも示されている。

地方での副業に対する関心の高まり

実際に副業をしている人の割合は多くないものの、企業をはじめとする社会全体としては、副業を受け入れようという姿勢が見えはじめている。なかでも若い世代を中心に関心を集めているのが、地方企業で行う副業だ。

株式会社パーソル総合研究所が2021年8月に発表した「副業に関する調査結果(個人編)」によれば、都市部に居住する副業者や副業を希望する人のうち、地方での副業に関心があると回答した人は55.8%にのぼった。特に男性の若年層で関心が高い様子がうかがえる。

(画像は株式会社パーソル総合研究所のWebサイトより)

企業に勤める正社員1456⼈を対象とした、株式会社リクルートの「兼業・副業に関する動向調査2020」の結果も見ておきたい。同調査によると、住まいとは異なる地域での兼業・副業に興味があると回答した割合は、「兼業・副業実施中+実施意向あり」の人で76.6%、「兼業・副業の実施意向なし」の人でも34.4%にのぼっている。兼業・副業への興味に加えて、地方創生や自分となんらかの関わりがある地域への貢献に、一定の関心を示す動きが広がっているようだ。

なお、同調査では都市圏で働く人が地方企業で副業を行う状況を「ふるさと副業」と称し、新しい働き方としてカテゴライズしている。ここでの「ふるさと」は出身地に限らない。都市圏に暮らす人が、出身地ではないものの「学校があった」「旅行で訪れた」「応援したい企業や人がいる」などの理由から、親しみを感じる地域の企業で副業するケースも含んでおり、その範囲は幅広い。

関連記事:移住やワーケーションに次ぐ選択肢 ー 「第2のふるさとづくり」「地方副業」とは

リモートワークの普及に伴い、場所に縛られない働き方が広く浸透し、ふるさと副業を可能とする社会環境が整ってきた。ふるさと副業は、働き手にとって、移住などの物理的コストを割かずに地域社会と関われるというメリットがある。近年、都会と地方など2つの地域に拠点を持つ「二拠点生活(デュアルライフ)」が注目されているが、ふるさと副業にはいわば“エア二拠点生活”のような魅力があるのかもしれない。

一方、地方自治体や地方企業の多くは、人口減少や高齢化という課題を抱え、慢性的な人材不足に悩まされている。ふるさと副業は、それぞれの組織が求める経験や知見、斬新なアイデアを持つ都市圏の人材とマッチングできる可能性がある。そのような高スキル人材を、本業ではなく副業を介して雇用できれば、人件費の削減というメリットも得られるだろう。

ふるさと副業を支援するサービスや取り組み

働き手と地方の双方にメリットがあり、今後の働き方のトレンドとして注目される「ふるさと副業」。その気運を盛り上げるサービスや取り組みの先進事例を紹介したい。

1. 地域の課題を知る地方企業が運営する「ふるさと兼業」

働き手と地方企業をつなぐマッチングサービスが登場している。その一つである「ふるさと兼業」は、岐阜県のNPO法人G-netを中心に、全国各地の企業(地域パートナー)が連携して運営するマッチングプラットフォームだ。給与待遇ではなく、共感や熱意をベースとした“意味報酬”のマッチングを行っていたり、専属コーディネーターによる伴走サポートを提供していたりする点に特徴がある。

2021年11月、同プラットフォームの地域パートナーになったのが、新規事業開発の支援や人材育成、デジタル化支援などのサービスを提供する「株式会社アルファドライブ高知」(高知県)だ。

同社は事業を通して、ITやマーケティング、商品開発、経営企画など、専門的なスキルを持つ人材の不足や採用難易度の高さについての話を企業から聞く機会が多かったという。そこで、県内の産業振興に取り組む企業として、地域企業の人材確保に関する課題を解決し、事業や組織の成長を後押しするために、地元企業と兼業人材のマッチング支援をスタートするに至った。

ユニークなのは、同社自身もふるさと兼業を利用して3人の人材を採用しており、彼らが採用プロジェクトをリードしている点にある。専門性の高い地域外の人材が強く求められていることの表れと言えるだろう。

2. 工芸に貢献したい人と企業のマッチングイベントを開催した「サンカク」

社会人のインターンシップサービスを提供する「サンカク」は、地方企業と副業者をマッチングする、ふるさと副業サービスも展開している。運営するのは、「ふるさと副業」の名付け親である株式会社リクルートだ。

サンカクは2021年9月に、日本の工芸技術を活かした雑貨類を製造・販売する株式会社中川政七商店(奈良県)と協業し、地方や工芸に副業で貢献したい人と企業をマッチングするイベント「ふるさと副業『日本の工芸を元気にするデジタルブランディング』」をオンラインで開催している。「日本の工芸を元気にする!」というビジョンのもと、主催の中川政七商店をはじめ、漆琳堂(福井県)、かもしか道具店(三重県)、TO&FRO(石川県)、虎仙窯(佐賀県)、THE(東京都)という日本のものづくりブランド5社が参加。「デジタル手法を活用した工芸のブランディング・販売強化」を担う副業・兼業希望者を募集した。

一般社団法人日本工芸産地協会によると、伝統工芸品の産地出荷額は1983年の5400億円をピークに2014年には1000億円となり、30年で約5分の1の規模へ減少したという。縮小傾向にある同業界において、今後、ふるさと副業の存在感はさらに高まっていくかもしれない。

3. “フリーランス行政マン”という働き方を提案する「京都府京丹後市」

現地で暮らすことが前提となるが、都市圏の企業の仕事をリモートワークで続けながら地方公務員になるという方法もある。京都府京丹後市は、3年間の正規職員である「ふるさと創生職員」(通称:フリーランス行政マン)を2020年から毎年募集している。

ふるさと創生職員は、行政職員として京丹後市で週3~4日勤務しながら、地域内外で副業・兼業をすることも可能。地方公務員として安定した収入を得ながら、フリーランス的なワークスタイルで働くことができる。2020年の第1回募集の応募倍率は5.4倍。フリーランス行政マンという新しい働き方へのニーズは確かにありそうだ。

4. 副業としても可能な小規模農業が学べる「コンパクト農ライフ塾」

若い世代を中心に農業への関心が高まっていることは、以前本メディアでも紹介したが、副業においても農業は一つの選択肢となっている。

株式会社The CAMPus BASEは、小規模でも収益性の高い農業のノウハウを学ぶことができる、1.5カ月集中のオンライン講座「コンパクト農ライフ塾」を主宰している。副業として農業を考えている⼈、 セカンドキャリアに⽥舎暮らしをイメージしている⼈、すでに農家をしており事業の成⻑を考えている⼈などが対象だ。

特徴は、「自分ならではのオリジナルブランドをいかに創り出せるか」に力点を置いている点にある。就農や農的暮らしを始めるにあたって必要な「経営力・事業計画・ブランド力・仲間・自信」を得られるとのこと。同講座の受講者は、7割がセカンドキャリアや副業として農業関連の仕事を開始しているという。

農業を副業にすることを考えると、平日は都心部の会社に勤め、週末は地方に出かけて農業を行う「週末農業」が現実的なのかもしれない。副業というからには収益を出す必要があるが、同サービスでは成功ノウハウをオンラインで吸収できるため、農業初心者でもトライしやすいだろう。

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「ふるさと副業」は地方創生の起爆剤となる?

その地域に居住する「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもなく、地域と多様に関わる地域外の人々を指す「関係人口」という言葉がある。特に担い手不足に悩む地方圏において、関係人口には地域に変化を生み出す糸口としての役割が期待されている。

出身地域かどうかを問わず、なんらかの理由で親しみを持つ地域に貢献するという「ふるさと副業」のあり方は、まさに関係人口そのものだ。ふるさと副業という新たな選択肢が、働き手をめぐる環境や地域社会にいかに作用していくのか、今後もその動向に注目したい。

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この記事を書いた人

Rui Minamoto 女性誌のインタビューから経済誌の書評欄まで、幅広いテーマの取材・執筆を担当。近年は、広告・PRプランナーとして消費者インサイトの発掘や地方若者議会で「広報力養成講座」の講師も務めている。



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