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ウェブ会議で得られない、リアル会議の”熱量”の正体とは?―東海大学 現代教養センター 教授 田中彰吾 博士(学術)インタビュー 前編

[March 17, 2020] BY Yuichi ITO

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働き方改革関連法の施行や今夏の東京五輪開催を背景に各所で進められてきたテレワーク。加えて、新型コロナウイルス感染拡大の懸念から、政府も在宅勤務などを積極的に経済界へ働きかけ、その動向にはより拍車が掛かる。通勤時間の削減やワーク・ライフ・バランスの実現といった個にフォーカスした取り組みにより、働き方のパーソナル化の是非が問われる現在、ワーカーが集い作業を共にしていたオフィスのあり方も再考を迫られていると言っても過言ではないだろう。

2部作の前編では、どこでも働ける時代にもかかわらず、ワーカーがオフィスに集まり一緒に作業することの意味を模索する観点から、非言語コミュニケーションが我々に与える影響について、東海大学 現代教養センター 教授 田中彰吾 博士に話を聞いた。

言葉だけでなく、仕草や表情といった「非言語コミュニケーション」も〈場の雰囲気〉に影響する

間身体性-人と人が出会った場面で無意識のうちに笑顔や欠伸が伝染するなど、仕草や言動が同調する現象。「間身体性が表出する状況では、聞き手も話し手も主観的にコミュニケーションが取れていると感じる場合が多い」と田中氏は語る。会話場面を撮影した映像を細かく分析すると、互いにコミュニケーションが取れていると感じている時は同調が顕著であり、当事者の主観的な感じ方と間体性には相関関係があるという。我々のコミュニケーションにおいて、言語は大切な要素であるが、対峙した相手と円滑にコミュニケーションが取れるか否か、換言すれば〈場の雰囲気〉を掴むのには、身体が大きく影響しているというのだ。

「言葉だけでなく、仕草や表情、ジェスチャーといった総じて〈場の雰囲気〉がどのように絡み合いながらコミュニケーションに影響するのかは、周りの環境やセッティングにも大きく関わってくるし、空間の設計やデザインを考えるヒントを与えてくれる」と田中氏は続ける。人に対しても空間に対しても、我々は感受性を持ってその都度反応しており、一般的に言う、〈相性が良い〉〈馬が合う〉はこのことを良く表している。

田中氏は、そのままだと目に見えない非言語コミュニケーションの様相を記録映像を通して日々考察している。ただ、そのアウトプットは論文や学会発表になり、ビジュアルとして伝えることは難しく、米国の研究者の間ではカウンセリングなどのケーススタディの提供を通して、実体験として理解してもらう方法が一般的となっている。例えば、政治家の演説の際の身振り手振りなどから、より聴衆に伝わる術などを、いわゆるプレゼン術としてカウンセリングしている例だ。

例えばオフィスにおいて4人で打ち合わせをする場合に、あえて1人だけ別室から電話で参加する場合でも、身体に関わる情報が多い方がメタレベルでは円滑なコミュニケーションに寄与する傾向にあるという。息遣いや間合いも含め〈場の雰囲気〉だ。間身体性において身体が同じ場所にあることは非常に重要なファクターであり、相手の身体が見えた時に、自分の身体がどのように反応するか、逆に自分の身体が動いたときに相手がどのように反応するかの循環が〈場の雰囲気〉を形成する。

その点、テレビ会議などのビデオカメラで伝わるものはビジュアルに依存する、視覚以外のチャンネル(匂い、接触、距離など)による感覚が得られない分、情報はそぎ落とされている。人間の知覚は、複数のチャンネルから得た情報を統合することが脳において重要な作業である。そのためいくら視覚の情報量が多くても、視覚情報だけでは対象となる人の印象を形成する際に偏ったものになるというのだ。その人が表出する手段、例えばメールより手書きの文書といったものの方がコミュニケーションの深化が図られ、互いの理解を促しやすいだろう。

とはいえ、適切なコミュニケーション方法を決める鍵は「何を相手と共有するか」

逆に電話だから深い話しができる場合もある。言い換えると、必ずしも全身がビジュアルで投影されている必要はなく、その点は未知数という。話しの内容によっては、メールの方が伝わりやすいものもある。伝達する内容も大切だが、伝達する手段=メディアにより留意すべきことはある。ロジックがはっきりしていて、決を採るだけならテレビ会議の方が早い。一方で会議に参加して、結論を一緒に導いた体感が残るかどうかというと、テレビ会議では残りにくい。

「何を共有したいかによって、人と人のつなぎ方を考慮するのが賢明だ」と田中氏は示唆する。つまり、コミュニケーションの目的によって、手段は変わってくるし、それに合わせて手段を選択することが大切というのだ。電話で話すと要領を得ずメールの方が相手に伝わりやすい経験を誰しも持っているのはまさにそれである。明確な情報を伝えるときはメール、相手の様子を伺いながら進めたいときには電話などと使い分けが肝要だろう。

次ページ:オフィスで企業文化を表現することでコミュニケーションはより円滑になる

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この記事を書いた人

Yuichi ITO食品メーカーからPR会社を経て、オフィスコンサルティングファームの広報へ。社会人スタート以来、マーケティングや広報といったコミュニケーション活動に一貫して従事。ライフワークにワークプレイスや働き方に関する情報発信が加わり、広く興味津々。

    
    
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