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Z世代に学ぶ、不確実性(VUCA)時代の生き方と働き方

[September 14, 2021] BY Naoto Tonsho

Z世代(ジェネレーションZ)とVUCAの時代

「青春」のそばに、当たり前のようにSNSが存在している世代——。1990年代半ばから2000年代に生まれた世代を「Z世代」と呼ぶ。

彼らの年齢(1995年生まれを基準)とSNSの歴史をたどってみると、Facebookが設立された2004年に9歳、2008年の13歳にはTwitterが日本に上陸。15歳を迎えた2010年には、Facebookの日本支社が設立され、InstagramもAppStoreにリリースされている。翌年の2011年にはLINEが日本でサービスを開始した。Z世代の一期生が23歳を迎えた2018年には、TikTokが世界を席巻している。

Z世代が多感な時期を過ごすのと同じ時期にSNSも隆盛を極めており、彼ら世代のとなりにはいつもSNSがあると言える。そんなことから、Z世代を「ソーシャルネイティブ世代」とも呼んでいる。

様々な情報をマスメディアから得ていた世代とは比較にならないほど、あらゆる情報と自由につながっているZ世代の価値観が多様であることは容易に想像がつく。Z世代はこれからの日本、世界の労働人口において、その割合を増してくる。そこで、実際にZ世代が社会をどのように捉え、関わっているのかを掘り下げることで、不確実性(*VUCA)の時代と言われる今の時代とこの先の未来における生き方や働き方のヒントを得たい。

関連記事日本のミレニアル世代・Z世代が持つ「仕事・働き方」の価値観5つ

*編注
VUCAとは次の英単語の頭文字をとった言葉で、近年、主にビジネス領域で使われている。
Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性

Z世代が大切に思うのは「家庭」?

まず彼らがどのような価値観を持っているのかを示唆する、ある調査結果を提示したい。Z世代が中心となって立ち上げたプロジェクト「Z世代会議」が、2018年4月に発表したレポート「若年層の価値観・ライフスタイルに関する調査『Z世代レポート2018』」だ。

国内在住の16〜35歳、2824名を対象に行った調査だが、このなかでとても特徴的であり印象深いのが、価値観・ライフスタイルに関する104の選択肢から、Z世代に該当する16〜21歳が選んだ項目である(「Z世代レポート2018」P11)。彼らが最も多く選んだのは、「家庭では男女の区別なく家事・育児を分担した方が良い」(63.8%)という選択肢だった。

16~21歳という年齢ながらこのトピックへの関心が高いというデータは、この後、Z世代を語る上で極めて示唆的な事実だと思われる。

2位の「自分が気に入れば有名ブランドの商品でなくても良い」や3位「ショッピングは楽しいと思う」という、ブランドや買い物といった、いわゆる“若者らしい”トピックが選ばれるのはわかる。それらを抑えて、家族を大切にすることが、最良の人生を送る上でとても大切だと教えられるようなトピックを優先的に選んでいるのだ。

では、なぜZ世代は、「家庭では男女の区別なく家事・育児を分担した方が良い」ことが最も重要と捉えているのだろうか。そこには、やはりSNSの存在が大きく関係していると思われる。

SNSがZ世代にもたらしたもの

Z世代に特徴的なSNSの利用法に、1つのSNSで複数のアカウントを持つことがあげられる。上述した「Z世代レポート2018」でも、価値観・ライフスタイルに関する104の選択肢のうち、16〜21歳(Z世代)と29〜35歳(ミレニアル世代・Y世代)で最も差が出たのは「1つのSNSで複数のアカウントを使い分けている」(16〜21歳:37.9%、29〜35歳:8.3%、「Z世代レポート2018」P13)で、その差は29.6ポイントであった。

リアルな交友関係から、自分の興味や趣味などのコミュニティごとに、本アカウントとサブアカウントを使い分けているのだ。言うなれば、それぞれに個性の違うアカウントを持つわけで、アカウントによってタイムラインに流れる情報も彩りが豊かになる。

リアルの世界で、そうした幅の広い交友関係を持つのはなかなか難しい。社会人であれば、会社と趣味、家庭など、自分の“所属”する場所によって触れる情報にも違いが出てくるが、高校生、大学生、新社会人ともなれば、リアルでの交友関係は限られてしまうのではないだろうか。一方、SNSであればそこに限りはない。

好むと好まざるとにかかわらず、様々な情報に触れることで、自ずと社会を見る“目”が養われるのかもしれない。フランス・パリに本拠を置く広告会社criteoの記事「ミレニアル世代vsZ世代:押さえておくべき4つの違いと特徴」によれば、米国において、「Z世代の3分の1が、自分たちは人間の平等を最も強く信じている世代であると回答」とのこと。また、「Z世代の半数以上は、黒人の権利を主張する国際的な社会運動である『ブラック・ライヴズ・マター』運動(80%)、トランスジェンダーの権利(74%)、およびフェミニズム(63%)といった活動について、現代社会が受け入れるべきものだと主張」とある。

なぜ彼らは、若いうちから社会課題を身近に捉える力を持っているのか。それは、いつでもアクセスできるソーシャルメディアに社会課題に関する情報があり、それをありふれた情報、当たり前に考えるべきこととして認識しているからではないだろうか。さらに言えば、かつては様々な意見があっても、時間をかけて社会全体で議論が進み、ある一定の「解」が導き出されていたものがあった。彼らの間ではそれが定型句として広がり、SNS上では“常識”や“ルール”として語られる。Z世代は、そうした定型句を素直に受け止め、その上で社会課題と向き合っているのではないか。

このように考えれば、自らが親となり家庭を持っていなかったとしても、「家庭では男女の別なく、家事・育児を分担した方が良い」ことや、「人間の平等を最も強く信じる」こと、ブラック・ライヴズ・マターやトランスジェンダーの権利、フェミニズムへの理解があることもうなずける。

こうした身の回りの社会や世界全体に対するZ世代の捉え方を見ていると、2019年9月にニューヨークで開催された「国連気候アクション・サミット2019」で、スウェーデンの当時16歳だったグレタ・トゥーンベリさんが痛烈に放った演説が思い出される。

「生態系は崩壊しつつあります。私たちは、大量絶滅の始まりにいるのです」

「なのに、あなた方が話すことは、お金のことや、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかり。よく、そんなことが言えますね」

「あなた方は私たちを裏切っています。しかし、若者たちはあなた方の裏切りに気付き始めています。未来の世代の目は、あなた方に向けられています」

NHK政治マガジンより引用)

世界のリーダーを前に放った言葉は、世界中で取り上げられた。グレタさんの語った言葉の背景には、世にあふれる情報から彼女が掴み取った“真実”があるのだろう。

グレタさんの発言を過激と一蹴する向きもあるが、Z世代のみならず最近の消費活動として注目を集める「エシカル消費」にも、グレタさんの発言と共鳴するものが感じられる。エシカルとは倫理的、道徳上という意味だが、わかりやすく言ってしまえば、不都合な真実から目を背けないということ。Z世代には、まさしくこのエシカルな感覚が備わっていると言えはしないだろうか。その感覚は何も、気候変動や労働における人権侵害といったことのみならず、あらゆることにまっすぐに向けられている。

関連記事「エシカル」とは何か? 企業そして個人に広がる働き方・考え方

社会が学ぶべき、Z世代の考え方

Z世代が社会問題に対してエシカルな感覚で向き合う一方で、実は彼らを受け入れる側である社会のほうが戸惑う場面もあるようだ。Z世代が社会との関わりを持つ就職活動の場で、サステナビリティに取り組む自分自身の活動について企業に十分に伝えられていないという。

サステナビリティをコンセプトにグローバルコミュニティを展開する「SUSTAINABLE BRANDS」が主催する「サステナブル・ブランド国際会議2021横浜」(2021年2月24~25日に開催)では、様々なセッションが行われた。そのなかに、就活中の学生と企業の広報担当者が議論を交わすセッションがあり、そこでの様子を伝えたレポートで、学生と企業のサステナビリティについての温度差が顕著に現れた例がいくつかあげられている。

・面接官と話が合わず、サステナビリティ活動の話は封印し、アルバイトの話をせざるを得なくなった。
・ある企業の説明会に参加した際、担当の社員が「流行りのSDGs」と発言したことに大きな疑問を持った。
・社会人2年目の話として、サステナビリティ活動をしていることを社内で話しづらく、気を遣いながら活動の仲間づくりをしている。その理由として、「面倒くさい人」と思われるのではないかという懸念がある。

社会に出てみると正しいことを正しいと言いづらい状況がある、そんな思いが彼らの発言からは見えてくる。こうした彼らの思いを単なる世代間格差と一蹴してはいけない。ましてや、彼らの活動や発言を「学生ならでは」とか、「社会はそんなに甘いものじゃない」などと軽くあしらえば、Z世代からはそれこそ「うっせぇわ」の烙印を押されてしまうかもしれない。サステナビリティ活動をしているZ世代が、活動の先に見据えているのは、社会全体が抱える課題の解決ではないだろうか。

2019年にデロイトがミレニアル世代とZ世代に対して行った意識調査「デロイトミレニアル年次調査(日本版、P26)」では、ミレニアル世代とZ世代は、「企業は発する言葉すべてを意味ある行動につなげ、ビジネスリーダーはポジティブな変化を促す旗振り役として尽くして欲しいと考えている」と結論づけ、雇用主が行うべきことをいくつかあげている。

・ミレニアル世代やZ世代との会話を持ち、彼らの懸念に耳を傾け、彼らにとっての重要事項はなぜ重要なのかを理解できるよう尽力する。
・社会に影響を与える責任を認識していることを、目に見える・明言する形で示していく。
デロイトミレニアル年次調査より抜粋)

Z世代を理解することは、単に彼ら世代を知るにとどまらず、社会課題への気付きを与えてくれることにもつながりそうだ。

感染症や自然災害、国家間および国内の紛争など、予測不能で確信を持って未来を語ることのできない不確実性の時代にあって、Z世代が抱く社会に対する懸念は、不都合な真実を含む、ある種の普遍性を持っているように思われる。予測不能なことが起きたとしても、普遍性を持って社会課題に取り組む姿勢は揺らぐことはなく、またZ世代にも支持されるのではないだろうか。

2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、17の目標とそれを達成するための具体的な169のターゲットで構成されている。そして、その目標は2030年までに達成されることが強く期待されている。残された時間は10年を切った。2030年から先の未来をつくっていくZ世代の声に耳を傾けていくことが、今、求められているのかもしれない。

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この記事を書いた人

Naoto Tonsho週刊誌の記者としてキャリアをスタート。政治、経済、社会問題まで幅広く取材。2016年頃より企業の広告・PRなど、BtoB関連にも業容を拡大。最近では、企業経営者へのインタビューや統合報告書制作などにも携わる。



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