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Google Apps Scriptを上手に活用!身近なDXを実現する方法

DXへの対応に遅れを感じている企業におすすめしたいのが、高度なスキルがなくてもプログラミング可能な「Google Apps Script」の活用だ。そのメリットや活用事例を紹介する。

日本企業のDX事情

ビジネスの現場でデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が叫ばれて久しい。その背景には、各業界に破壊的変化をもたらす「デジタルディスラプション」や、グローバル化による市場での競争激化がある。システムの老朽化やIT人材不足といったいわゆる「2025年の崖」の問題もあり、日本におけるDXは待ったなしの状況だと言える。

しかし、帝国データバンクが約1万社に対して行った「DX推進に関する企業の意識調査」によると、DXを理解して取り組んでいる企業は7社に1社と少数派だ。「対応できる人材がいない」こと(50.8%)、「必要なスキルやノウハウがない」こと(47.7%)、「対応する時間が確保できない」こと(33.2%)、「対応する費用が確保できない」こと(26.1%)などが課題にあげられており、各企業がDXに対して難しさを感じていることがわかる。

そこで、身近なルーティーンワークに対して、素人でも検討が可能かつ安価で実現できるDXから着手してみてはいかがだろうか。筆者がおすすめするのは、Google Workspaceでの作業を自動化する「Google Apps Script (以下、GAS)」だ。以下に参考となる事例を取り上げていく。

Google Workspaceとは

Google Workspaceとは、Gmail、Googleカレンダー、Googleスプレッドシート、Googleドキュメント、Googleドライブなどを含む、クラウド型のアプリケーションのセットを指す。「一つのウィンドウで、複数のメンバーとGmail上でチャットをしつつ、ドキュメントを共同編集する」といったような、ツール間の連携や共同作業のしやすさなどが長所とされている。

Google Workspaceの利用企業は2020年には600万社を達成するなど、DX推進が要求されるに伴い注目を集めている。Google Japanによると、ANA、スシロー、CASIO、ファミリーマート、クボタ、マイナビをはじめとした大手企業で導入されており、日本でも普及していることがわかる。

Google App Scriptのメリットとデメリット

この記事で取り上げるGoogle Apps Scriptは、上述のGoogle Workspaceで利用するプロコードプログラミング環境のことだ。業務の自動化・効率化を可能にするスクリプト言語で、Google Workspaceに無料で付属している。

API(Application Programming Interface)を用いれば、Slack、TwitterといったGoogle Workspace以外のアプリを操作したり、ニュースサイトから自動的に取得したデータを利用することができたりするなど、その柔軟性もメリットの一つ。デジタル化・クラウド化を推進したい企業が、ワンステップ上のDXを目指すのにはうってつけのツールだと言える。

テンプレートが豊富なGAS

GASは、JavaScriptというプログラミング言語を基盤としている。ある程度の学習時間は必要だが、Google Solutions Galleryのほか有志のユーザーらが豊富なテンプレートを公開しているため、初心者でも始めやすい点が魅力だ。テンプレートはプログラムを組むためにそのまま流用することができるうえ、これを手本にしてテンプレートに改変を施すことで、思い通りのプログラミングが作成できるようになる。

GASのベースになっているJavaScriptは、ほかのプログラミング言語と比べて必要な知識やプロセスが比較的少なく、利用者の心理的ハードルは高くない。ブラウザさえあれば開発に着手可能で、コードを入力して実行ボタンを押すだけで正しく動作しているのかを即時に確認できることも、GASが親しみやすい理由だと言えるだろう。

企業におけるGoogle App Script の活用事例

最後に企業のGASの活用事例をいくつか取り上げていきたい。きっと身近なDXを目指す組織の参考になるはずだ。

1. 株式会社ニコリー

まずはGASを利用した業務の効率化を推進する、スタートアップ企業・ニコリーの事例を紹介したい。

同社では、スプレッドシートを用いた日報・タイムカード管理をGASを用いて、新しい日付のカラム・新しい月分のシートに自動追加されるようにしているという。このほか、スプレッドシート上で社員同士のランチ会の参加可否を管理し、グループ分けをGASで自動化。ほかのツールと組み合わせ、様々な情報ソースからデータを集計し、予算やKGI・KPIを管理するスプレッドシートの作成も行っている。

2. 株式会社アディッシュ

次に紹介するのは、カスタマーサクセスソリューション・プロバイダーのアディッシュ

具体的には、スプレッドシート上の各チームの管理シートを定期的に集計し、全社の管理シートに書き出されるようにプログラミングしているという。また、Gmailに届いたメールから営業候補になる情報をスプレッドシートに書き出し、誰かが共有マークを付けたときにSlackで通知されるプログラムもつくっている。

小さなDXから始めることの重要性

DXの実行には様々な障壁があるかもしれない。しかし、その結果として得られる「生産性と効率性の向上」のメリットは何ものにも変え難い。

筆者自身も大学新聞部に所属するプログラミング初心者だが「インターネット上にあるテンプレートを組み合わせてGoogleドキュメントで作成した記事の草稿を、新聞記事仕様に変換するプログラム」を3日ほどで完成させた経験がある。英数字の半角への修正や、改行作業など、面倒が一気に効率化した感動は忘れられない。

DXがまだまだだと感じている企業の担当者の方々には、まずはGAS導入という小さな一歩から始めることをおすすめしたい。事務処理や決裁など出社を前提とした業務がGASによって自動化され、テレワークへのシフトを加速させるきっかけとなるかもしれない。

この記事を書いた人:NPO法人Collable