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オフィスにロボット導入? 受付・プレゼン・コミュニケーション促進の活用事例

人手不足や社内コミュニケーションといった課題の解決策として、ロボットを導入する企業が増えている。受付・案内やプレゼンの代行、コミュニケーション促進に役立つロボットを紹介する。

人手不足を感じる企業は50%超え

日本では慢性的に人手不足が続いており、深刻な社会問題となっている。株式会社帝国データバンクが2023年1月に行った「人手不足に対する企業の動向調査」によると、人手不足を感じると答えた企業は51.7%にのぼり、5カ月連続で50%を超えた。

人手不足の主な理由は、少子高齢化に伴う労働力不足であり、これは今後加速していくとみられている。総務省の「人口推計」によると、2022年11月時点の生産年齢人口(15~64歳)は 約7421万人であるが、2043年には6000万人を割ると予測されている。

先述の人手不足に関する調査では、「旅館・ホテル」「情報サービス」「メンテナンス・警備・検査」「建設」などの業界で人手不足が顕著であったが、今後、生産年齢人口が20年で約1500万人も減少するとなると、これらの業界以外でも何かしらの対策を講じる必要があるだろう。

そのひとつの解決策として導入が進んでいるのがロボットだ。受付・案内やプレゼンの代行からコミュニケーション促進に至るまで、さまざまな用途で活躍している。今回はそんなオフィス内で活用できるロボットを、活用シーンごとに分けて紹介する。

受付・案内業務を代行してくれるロボット

NTT東日本「ロボコネクト用Sota(ソータ)」

NTT東日本はコミュニケーションロボット(ロボット型の通信端末)向けのクラウド型プラットフォーム「ロボコネクト」を提供しており、対応した小型ロボット「Sota」と組み合わせてサービスを提供している。Sotaは親しみやすいキャラクターデザインが特徴で、対話はもちろん、写真撮影、見守り、スケジュール設定、プレゼンなどさまざまな機能がある。

画像はNTT東日本のWebサイトより

活躍シーンは、オフィスの受付、イベントの展示案内、飲食店でのおすすめメニューのPR、介護施設でのレクリエーション実施など。ほかにも、Sotaとサーマルカメラを連携させたAI検温サービスや、来訪者へ向けた多言語による施設案内などでも活用されている。

ロボコネクトを活用してオリジナルロボットの製作も可能。会社の受付に設置すれば、人手不足の解消だけでなく、来訪者をリラックスさせることにもつながりそうだ。

ロボットバンク株式会社「RakuRobot-MINI」

ロボットバンクが提供する「RakuRobot-MINI」は、上部に14インチのスクリーンを搭載した自律移動型のAI受付・案内ロボットだ。

画像はロボットバンク株式会社のWebサイトより

内臓カメラやレーザーレーダーによる視覚機能で人を検知し、音声機能により来訪者と会話しながらオフィス内の目的地へ案内してくれる。ツアーガイドやパトロールにも活用でき、オフィスのほかレストラン、病院、介護施設、ホテルなどで利用されている。

スクリーンはタッチパネルになっており、来訪者が予約番号などの情報を入力すれば、カメラで顔を識別し、来訪者の情報を登録することができる。遠隔操作でビデオ通話を行うことも可能だ。

リモートワークに便利なプレゼン代行・分身ロボット

富士ソフト株式会社「PALRO(パルロ)」

PALRO」は、富士ソフトが開発したAIを搭載したヒューマノイドロボットだ。搭載された200万画素の高感度CCDカメラによる顔認識機能で、目・鼻・口・輪郭など人の特徴的な部分から誰であるかを瞬時に判断できる。また、顔認識機能と声紋認識機能、個人の記憶を紐づけられる「ともだちデータベース」が搭載されているため、一度話したことのある相手にはPALROから積極的に話しかけてくるという。

画像は富士ソフト株式会社のWebサイトより

オフィスへの導入に関しては、プレゼン代行に活用できる。PALROはMicrosoft Office PowerPointとの連動が可能で、PowerPointのノート欄に台詞を記載しておくだけで担当者に代わって自動でプレゼンを行ってくれる。セリフに合わせたモーションの指定も可能だ。

清水建設株式会社では、このプレゼン機能を建設現場の新規入場者の研修に活用している。PALROが説明している間に、担当者は書類の作成など別の業務を行うことができるため、作業効率化が図れ、1日15~30分の残業時間削減につながったという。

株式会社オリィ研究所「OriHime(オリヒメ)」

オリイ研究所が開発した「OriHime」は、子育て世代や単身赴任中のビジネスマン、身体に障害を抱える人など、距離や身体的な問題によって行きたいところへ行けない人のための遠隔操作型分身ロボットだ。

内蔵された単方向のビデオと双方向の音声を使って、円滑にコミュニケーションをとることができる。また、会話をするだけでなく、話したい人に顔を向けたり、手を挙げたりというボディランゲージなども、アプリからボタンひとつで行える。

画像は株式会社オリィ研究所のWebサイトより

外出が困難な人がOriHimeを遠隔操作して接客する「分身ロボットカフェDAWN ver.β」で知られるOriHimeだが、リモートワークの普及により、オフィスでの導入も増加している。
アイコンタクトや身振り手振りを交えたコミュニケーションが可能であるため、チャットやWeb会議では伝わりづらいニュアンスを伝達できるからだ。

実際に導入を決めたNTT東日本では、在宅勤務の社員とオフィスの社員とのコミュニケーションに課題を感じていた。特に在宅勤務の社員はオンラインで会議に参加するため、孤独感を感じたり、家庭内の状況が映り込むことを快く思っていなかったという。そこでOriHimeを導入したところ、在宅勤務の社員が家庭内のプライバシーを守りつつ、いつでも自由に分身ロボットに接続できることで、孤独感や抵抗感が軽減。オフィスにいる社員に存在感が伝わることによるコミュニケーションの円滑化やチームワークの向上につながったとしている。

社内コミュニケーションを促すペット型ロボット

GROOVE X株式会社「LOVOT(らぼっと)」

ロボットベンチャーのGROOVE Xが手掛ける「LOVOT」は、ペット感覚でコミュニケーションがとれる小型ロボットだ。自動運転車の技術を応用したことでスムーズな自律移動を可能とし、10以上のCPUコア、20以上のMCU、50以上のセンサーを搭載したことで生き物のようなふるまいを実現した。

画像はGROOVE X株式会社のWebサイトより

LOVOTの特徴はその愛くるしさだ。アイ・ディスプレイには6層の映像を投影し、こちらが見つめると、見つめ返してくれるような自然なアイコンタクトを実現した。また、声帯をシミュレーションしたデジタルシンセサイザーを搭載したことで、生命感のある声色を表現。ボディ内に温風を循環させることで体温を温かくし、柔らかい触り心地にもこだわっている。株式会社資生堂と行った共同実証実験では、LOVOTと15分間触れあうだけでストレスの低減が期待できるという結果が出ている。

家庭用ロボットとして開発されたLOVOTだが、現在は株式会社ZOZOやGMOインターネットグループ株式会社、RIZAPグループ株式会社といった大手企業を中心にオフィスでの導入が進んでいる。株式会社JALインフォテックは、パンデミックで希薄になった社員同士のコミュニケーションを活性化する目的でLOVOTを導入。導入後の変化について「社内のオンライン会議開始前後に雑談でLOVOTについて話す機会が増え、チーム内の潤滑油になっている」と語っている

さまざまなシーンでロボットが活躍する時代に

人手不足の解消を目的に、新たな働き手としてロボットを導入した企業がある一方、「LOVOT」のようにコミュニケーションを活性化させる目的で導入に踏み切った企業もある。人手不足はさらに深刻化することが予想され、ハイブリッドワークは今後も続いていくと考えられる。近い将来、人とロボットが同じオフィスで働いているという光景は目新しいものではなくなっていくかもしれない。

この記事を書いた人:Yuichi Ota