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雑談の“ハイブリッド化”を成功させる、ユニークな取り組みとは?

[June 14, 2022] BY Wataru Ito

テレワークで雑談が減少。どんな影響が?

テレワークの普及により、多くの企業で雑談の機会が減っている。一般社団法人日本能率協会が2021年に行った「ビジネスパーソン1000人調査」によると、テレワークを行っている人の8割以上が「雑談がしにくくなった」と回答。週1日以上テレワークをしている人のうち5割超が、実際に職場のメンバーと雑談する機会が「減った」、もしくは「やや減った」と答えている。

同調査で雑談の効用について尋ねたところ、6割以上の人が、雑談が業務の「生産性を高める」あるいは「創造性を高める」ことにつながっていると回答。雑談が「人間関係を深める」ことにつながっているとする人も7割を超えたという。また、全体の8割近くが、雑談が自身にとって「プラスである」または「ややプラスである」としている。

このように、多くの人が雑談の効用を実感しているが、テレワークと出社を組み合わせたハイブリッドワークが一般化しつつある今、どうすれば雑談を復活させることができるのだろうか。各社が模索するなか、リモートとオフィスの両方で雑談を活性化させる、いわばハイブリッドな取り組みが登場している。本記事ではそうした事例を紹介し、今後の雑談のあり方を考察する。

関連記事:ハイブリッド・ワークは続く? 2022年以降のワークプレイスの行方 ー WORKTECHレポート

雑談に期待されるメリット

会社における雑談とは、従業員同士が交わす、業務とは直接関係のない会話を指す。近況を尋ねたり、プライベートの話をしたりするほか、世間話や趣味、家庭についてなどトピックは多岐にわたる。そもそも、雑談にはどのような役割やメリットがあるのだろうか。

1. 気軽に話せる→「心理的安全性」の確保へ

同じ会社組織に属していても、業務上のコミュニケーションしか取っていない相手に、相談や仕事の頼みごとをするのはハードルが高いものだ。しかし、雑談を通じて距離が縮まるとそのハードルは一気に下がり、質問や相談のほか、自分の意見も言いやすくなるだろう。

気軽に話せる関係は、心理的安全性の土台になる。心理的安全性とは、非難されたり嫌われたりする不安を感じず、安心して発言できる環境のこと。雑談は、その土台づくりに一役買っている。

2. 相互理解が深まる→「チームワーク」の向上へ

業務上のコミュニケーションでは、通常、業務に必要な情報のやり取りに終始しがちだ。その点、雑談によるコミュニケーションでは、相手の置かれた状況、その人の個性や人柄、価値観までうかがい知ることができる。

相互理解が深まると、相手を気遣う気持ちが両者に芽生える。そして、協力し合い、助け合う姿勢が育まれ、チームワークの向上も期待できる。部門間の理解不足から生じるセクショナリズムに対しても、雑談は有効な予防策の一つとなるだろう。

3. ストレスを解消できる→「ウェルビーイング」の実現へ

株式会社リクルートキャリアが、コロナ禍でテレワークをするようになった20~60代の就業者2272名を対象に行った調査によると、テレワークでのストレスが解消できていないと回答した人の割合は、仕事中に雑談がある人で63.2%、雑談がない人で77.3%と、14.1%の差が見られた。

雑談はストレスの解消に多少なりとも貢献すると考えられ、従業員のウェルビーイングという観点からも重要と言える。話すことで気持ちが落ち着く、不安や孤独感が和らぐ、さらには相手の不調を察知してサポートすることもできる。そんな役割も、雑談には期待できるのではないだろうか。

4. アイデアが浮かぶ→「イノベーション」の創出へ

例えば、同僚との雑談をきっかけに新商品のアイデアが思い浮かぶといった、仕事から離れた話題からインスピレーションを得るケースは珍しくない。

新商品や新規事業の種は、異分野の情報や世の中の流行にアンテナを張り、周囲の人々の声に耳を澄ますなかで見つかることもある。目的を持たず効率を追わない、そんな自由気ままな雑談の時間こそが、クリエイティブな発想を引き出し、ひいてはイノベーション創出につながると考えられる。

「リモート」と「オフィス」で雑談を促すハイブリッドな取り組み

このように、雑談には様々なメリットがある。もちろん雑談がすべてではないが、「心理的安全性」「チームワーク」「ウェルビーイング」「イノベーション」といった、企業経営において重要なキーワードと深く関わっているのだ。

リモートワークやハイブリッドワークの広がりとともに、雑談が減少傾向にあるなか、いち早く対策に乗り出した企業も見られる。なかでも注目したいのが、リモートとオフィスの両面で雑談を活性化させる施策だ。ワークスタイルと同様に、雑談の形も“ハイブリッド化”させている各社のユニークな取り組みを紹介する。

1. atama plus株式会社

学習塾向けAI教材を開発する、atama plus。同社が重視するのは、チームや職種ごとに垣根をつくらず、全員が一丸となってミッションの実現に取り組むカルチャーだ。そのため、日々のコミュニケーションを促進する施策が数多く実践されてきた。

【リモート】
2020年3~6月のフルリモート体制下において、チーム外とのコミュニケーションを活性化するため、毎日ふらっと集まって近況を話す「アタマ休み」を実施。また、入社3カ月までのメンバーを「スター」と呼ぶ同社では、「スタートーク」というオンボーディング(新入社員の定着と活躍のための支援)施策もオンラインで行っている。

スタートークは、新入社員が様々な部署・チームの先輩社員と1on2で30分間話す取り組みだ。話す内容は、キャリア、業務内容、趣味、最近はまっていることなど多岐にわたり、スターは3カ月の間に約100名と雑談するという。スタートークを経験した新入社員からは、「スタートークで話したことがあったので、業務でも気軽に質問しやすかった」との声もあがっており、雑談が気軽に話せる環境づくりにつながったことがわかる。

【オフィス】
一方で、カルチャーの醸成にはやはりオフィスという「場」が重要だと感じた同社は、オフィスにおける対面コミュニケーションにも注力している。新オフィス「atama park」へ拡大移転したのは2021年12月のこと。「Park」をコンセプトに、1フロア約500坪という全従業員が仕事に取り組める広さを確保した。

多様な価値観を持つ従業員がフラットに議論できるよう、原っぱのように開放的なオープンスペースや、執務エリアから切り離されたパントリーを設置。寛ぎの空間に自然と人が集まり、偶発的なコミュニケーションが生まれる仕掛けが取り入れられている。

2. freee株式会社

クラウド型会計ソフトを提供するfreeeは、フルリモートへの移行で従業員のコミュニケーションが減少したことに危機感を覚え、各種の施策を打ち出していった。

【リモート】
まずリモートワーク体制下では、全部署に対して雑談を義務化した。さらに、チーム内のコミュニケーションに偏らないよう、他部署メンバーとのランチ交流を促進する「Shall We ランチ?制度」もスタート。デリバリーサービスの食事代として一人あたり1000円を支給し、社内SNSに「#ShallWeランチ」のハッシュタグを付けてランチメンバーと撮った写真を投稿、共有するなどの施策を実施している。

【オフィス】
リモートワーク下でも雑談を促すことで、生産性の維持など一定の成果を得たという同社。その一方、自由闊達な議論や一体感の醸成などの点で、対面コミュニケーションの有用性を再確認したという。そこで、「従業員同士の対面コミュニケーション機会を創出し、組織の強い結束力と事業の成長を促進」するため、2022年8月に現オフィスの約2倍の面積となる新オフィスへ拡大移転することを決定した。

現オフィスでは、コミュニケーションを活性化するために、「ドリンクフリー」として勤務中の飲み物や軽食を無料で提供している。ドリンクバーでは、フロアが異なる社員とも自然と交流やディスカッションが生まれており、福利厚生としても掲げられたこの取り組みは新オフィスへも引き継がれるものと思われる。

3. 株式会社エスケイワード

Webサイト制作やオンライン動画配信サポートを手掛けるエスケイワードもまた、何気ない会話を増やす取り組みを導入している。

【リモート】
同社がリモートで行った施策の一つが、「雑談タイム」だ。毎日14:00~14:15を雑談の時間とし、専用のWeb会議に接続して談笑する。任意参加だが、仲間の顔を見ながら和気あいあいと話せる場として活用され、ときには育休中のメンバーが参加することも。また、コロナ禍前より行っていた、英語レッスンと英語のコミュニケーションを楽しむ「English Lunch」もオンラインで開催。支社のメンバーも参加可能となり、より多くの人とコミュニケーションが取れる機会となったという。

【オフィス】
コロナ禍で雑談の大切さを再認識した同社は、雑談のための時間「フィーカ」を毎月最終日に設定した。「Fika(フィーカ)」とは、コーヒーブレイクやおやつの時間にあたるスウェーデンの文化だ。フィーカの日には多目的スペースにお菓子を用意し、従業員は仕事の手を止めて執務空間から離れ、お菓子を食べながら部署をこえて交流する。15分を目安としており、適度な休憩による「仕事の効率アップ」と、談笑による「コミュニケーションの機会創出」を目的としている。

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何気ない会話を自然に生み出すために

雑談が発生しにくい状況では、会社側が意図的に雑談を仕組み化する必要がある。一方で、施策によっては、従業員の負担になって長続きしないなどの課題も生じやすい。雑談は本来、能動的で自然発生的なものだ。いかにして「気楽さ」や「ワクワク感」を施策に織り込めるかが鍵となる。

また、オフィスにおける雑談をリモートで完全に代替するのはなかなか難しいようだ。「久しぶりに出社した際、対面コミュニケーションのありがたみを改めて実感した」という声は、リモートでの雑談に取り組む企業でも見られる。ハイブリッドワークが定着した先には、リモートとオフィスの両面で雑談を活性化する仕掛けが重要となる。手探りの状況は、今後もしばらく続くだろう。

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この記事を書いた人

Wataru Ito フリーランスのコピーライター。中小企業やBtoB企業を中心に、ライティングを通してブランディング、採用広報、販売促進をサポート。建築学科卒、建材メーカー勤務経験あり。



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