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SDGsでも求められる障害者雇用。国内外の状況と日本企業の取り組み事例

[June 08, 2021] BY Yumi Uedo

SDGsでも掲げられる障害者雇用の拡大

企業における障害者雇用の促進は、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の達成にもつながる取り組みだ。SDGsには17の目標が設定されており、障害者雇用はその中の「目標8 働きがいも成長も」に含まれる。

SDGsの17項目
(画像は国際連合広報センターのウェブサイトより)

目標8は12項目のターゲットで構成されており、障害者雇用については次のように触れられている。

2030年までに、若者や障害者を含むすべての男性及び女性の、
完全かつ生産的な雇用及び働きがいのある人間らしい仕事、
ならびに同一価値の労働についての同一賃金を達成する。
(外務省「JAPAN SDGs Action Platform」より引用)

日本でも「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づいた取り組みは行われており、2020年6月時点、民間企業で働く障害者は17年連続で過去最多となった。ただし、対象企業での障害者の雇用率は2.15%に過ぎず、目標までにはまだまだ道半ばだと言える。

そこで本記事では、国内外の動きや積極的に障害者雇用を進める日本企業の事例を取り上げ、障害者雇用の現状を考察したい。

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世界における障害者雇用の状況

障害者雇用が進んでいるのは主に先進国だが、その方法は各国で異なる。その中から今回は特徴的な4カ国の取り組みを紹介する。

1.ドイツ・フランス

ドイツやフランスでは、従業員20名以上の企業に対して障害者の雇用を義務付けている。定められた障害者雇用率は2019年時点でドイツが5%、フランスが6%であり、未達成の企業には納付金が課せられる。不足する障害者1人あたりの納付金は、ドイツが月額で125~320ユーロ、フランスが年額で最低賃金時給の400~600倍となっている。なお、ドイツでは、職場整備や雇用創出の給付金として納付金が使われる。

ドイツ・フランスともに、対象となる企業が障害者を全く雇用しない場合は、さらなる金銭的ペナルティが課せられることもあり、それが雇用につながっているという見方もある。被雇用者全体に対する障害者の割合は、ドイツで4.1%(2017年時点)、フランスで3.8%(2015年時点)となっている。

2.アメリカ

アメリカでは、企業に対して障害者雇用は義務付けられていない。これは、差別を禁じ、障害の有無に関わらず、誰もが均等に就労の機会を得られるべきという考え方に基づいている。

例外として、政府と年間1万ドル以上の契約がある企業にのみ、7%の雇用目標が設定されているが、罰則はないのが実情だ。また、アメリカの労働市場では「ジョブ型雇用」が一般的であるため、障害者雇用に力を入れる一部の州を除き、福祉的な雇用ではなく戦力として障害者を雇用するケースが大半となっていることも他国と大きく異なる。

3.スウェーデン

福祉先進国として知られるスウェーデンでも、障害者雇用義務は存在しない。賃金補助金制度や、公共部門での保護雇用制度などの障害者向け就労支援プログラムが整備されているが、なかでも特徴的なのは1980年に創設された国営企業「サムハル(Samhall)」だ。

サムハルでは、障害が重く、通常の就業が困難な人を無期限で雇っている。労働者としてスキルを上げ、サムハル以外で就職することを目的としており、2017年末時点で約2万人の障害者を雇用している。

こうしたプログラムを利用することで、障害者の就業率は2017年時点で62.2%、全雇用者に占める障害者の割合は11.8%と、先進国の中でも非常に高い水準を示している。

日本における障害者雇用促進に向けた取り組み

一方、日本の制度はどうだろうか。2021年3月1日に改正された「障害者雇用促進法」では、法定雇用率2.3%の雇用義務を課している(改正前の法定雇用率は2.2%)。これは、従業員数43.5人に対し、1人の割合で障害者を雇用する必要性を示すものだ。

また、法定雇用率が未達成で常用労働者数が100人以上の企業には、1人あたり月額5万円の納付金が定められている。このほか、虚偽報告に対する金銭的ペナルティなどの罰則規定も設けられている。

厚生労働省の発表では、2020年6月時点において民間企業で働く障害者は57万8292人で、前年比3.2%増、17年連続の増加となっている。しかし、被雇用者に対する障害者の雇用比率は2.15%であり、発表時点の法定雇用率2.2%にも現行の2.3%にも届いていない。

また、法定雇用率を達成した企業は4万9956社で、全体の48.6%となっている。制度の対象となる企業の規模や法定雇用率は異なるものの、1990年代には達成した企業が50%を超えていたことを考えると、それほど大きな入れ替わりはなく、企業によって障害者雇用への取り組みに差があると言わざるを得ない。

政府は法改正のほかにも、障害者の就業支援や職業訓練といった雇用拡大のための様々な取り組みを行っている。その一つが、障害者雇用を積極的に行う中小企業を対象とする「もにす認定制度」だ。

認定事業主になると認定マークを広告などに使用できる、日本政策金融公庫の低利融資対象となるなどのメリットがある。そうしたインセンティブを付与することで、雇用を促す仕組みだ。周囲の理解や協力が必要となる障害者雇用においては、複合的な取り組みで裾野を広げていくことが、雇用を社会に浸透させる着実な道筋となるのだろう。

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日本企業における障害者雇用の事例

障害者雇用に消極的な企業もある一方で、独自の目標を定める、新たに組織をつくるなどして力を入れて取り組んでいる企業もある。ここでは2社の事例を紹介したい。

1. 8割の従業員が障害を持つ「楽天ソシオビジネス株式会社」

楽天ソシオビジネスは楽天グループの特例子会社で、主にグループ内のアウトソーシング事業を行っている。特例子会社は障害者雇用の促進と安定を図るために設立されるもので、その労働者は親会社やグループ会社に雇用されているものとみなされ、雇用率の算定に加えられる。

楽天ソシオビジネスの特徴は、特定子会社でありながら、独立採算制をとって業績を伸ばしていることにある。同社では代表取締役社長の川島薫氏をはじめ、約8割の従業員が障害を持っており、障害者が健常者と分け隔てなくいきいきと働き、チャレンジできる環境の整備に力を入れている。障害特性に合わせた採用活動を行うなど、採用にも独自の手法を取り入れており、組織づくりにおいて学べる点が多くありそうだ。

2. 社会貢献型の店舗運営を行う「株式会社LORANS.」

ローランズは「花や緑を通じて社会課題に貢献する」ことを企業理念に掲げ、主にフラワーギフトやブライダル装花などのサービスを展開している。従業員の約7割が障害者である同社には、代表取締役の福寿満希氏を含めて特別支援学校の教員免許保持者や福祉経験者が在籍。グループ会社の一般社団法人ローランズプラスでは、就職を目指す障害者向けのジョブトレーニングも行っている。

また、中小企業の障害者雇用を促進するため、「ウィズダイバーシティプロジェクト」にも取り組んでいる。これは、障害者雇用における環境整備などの課題を、複数の企業が組合をつくることで解決しようというもので、大手企業の特例子会社制度の中小企業版とも言える新しい取り組みだ。

障害者雇用と多様な可能性

障害者雇用にまだ取り組んでいない企業では、事例の不足などから採用に対して身構えてしまうこともあるかもしれない。しかし、雇用の方法は様々で、障害者を採用したからこそ広がる可能性も少なくない。

例えば、「多様な人材と分業することで残業が減り、組織の弾力性が向上する」「それぞれが得意分野に集中することで全体の生産性が上がる」といったことがあげられる。雇用においては、各種助成金や支援制度が用意されているだけでなく、「社会的責任を果たすことが企業の価値向上につながる」「多様性のある企業文化づくりにつながる」などの考え方もあるだろう。

真のダイバーシティ社会とは、SDGsで掲げられるように、すべての人が働きがいをもって自己実現できる社会ではないだろうか。障害のあるなしに関わらず多様な人材を受け入れる。そうした環境こそ、今企業に求められていると言える。

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この記事を書いた人

Yumi Uedo編集者/ライター。従事していた出版社およびWebメディアでは、大手企業・自治体をクライアントに持ち、多数のPR記事の取材・執筆・編集を担当。現在はフリーランスとして企業のコラムページを複数担当するほか、サスティナブルなライフスタイルの発信にも力を入れている。



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