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ダイバーシティを実現!「インクルーシブデザイン」の最新オフィス家具

[September 20, 2022] BY Kaori Isogawa

注目を集める「インクルーシブデザイン」とは

インクルーシブデザインとは、障害者、高齢者、外国人といった、これまで見過ごされてきたユーザーの視点を通して、潜在的なニーズを反映させるデザイン手法のことだ。近年、社会や企業活動においてダイバーシティ&インクルージョンが推進され、インクルーシブデザインのプロダクトやサービスが注目されている。

開発・企画・デザインのプロセスに包摂的な視点を取り入れることで、これまでにない新しいプロダクトやサービスの創出が可能となるのがインクルーシブデザインの特徴だ。ワークプレイスにおいても、オフィス家具に取り入れることで、誰もが快適に働ける環境が実現し、従業員エンゲージメントの向上が期待できる。

本稿では、多様な個を生かす社会を実現し、イノベーション創出に寄与するインクルーシブデザインの可能性に着目。デザインを生み出すプロセスについて知識を深めるとともに、あらゆるワーカーが利用しやすいインクルーシブデザインの最新オフィス家具を紹介する。

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インクルーシブデザインとユニバーサルデザインの違い

インクルーシブデザインと似た言葉として、ユニバーサルデザインがある。一般的にはユニバーサルデザインのほうがよく知られているかもしれない。いずれも障害者や高齢者、外国人といったマイノリティの視点からデザインされているという点で、基本的な目標は同じだが、その背景に違いが見られる。

ユニバーサルデザインは、自身が車椅子ユーザーである建築家ロナルド・メイス氏が提唱したアメリカ発祥のデザイン手法である。ユニバーサルには「普遍的な」という意味があり、幅広いユーザーを想定して、より多くの人がアクセスしやすいデザインを実現するものだ。

一方のインクルーシブデザインは、英国王立芸術大学院のロジャー・コールマン名誉教授が提唱したヨーロッパ発祥のデザイン手法である。インクルーシブには「包括的な」という意味があり、障害者、高齢者、外国人といった多様な人々の課題や潜在的ニーズを探ることで、多くの人が使いやすいデザインを生み出すことを目的としている。

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ダイバーシティを実現する、インクルーシブデザインのプロセス
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インクルーシブな視点やデザインは、多様性のあるワークプレイスや社会の実現にどのようにつながっていくのだろうか。そのデザインの過程とともに関係性を探ってみたい。

インクルーシブデザインのプロセスではまず、障害者や高齢者、外国人といったマイノリティのユーザーが、どういった環境や状況に不便さや困難を感じているのかという課題を知ることから始める。次に、浮かび上がった課題からその解決策をデザインに落とし込んでいく。この課題を解決するプロセスは、これまで平均的なユーザーから見出せなかった発見につながる可能性を秘めている。

このようにインクルーシブデザインは、マイノリティのユーザーが抱える課題を浮き彫りにして解決することから生まれる。ワークプレイスにもこうしたインクルーシブデザインを採用すれば、平均的なワーカーとマイノリティのワーカーが同じ環境下で働くことが可能になる。多様な人々が同じ環境で快適に働けるワークプレイスでは、マイノリティのワーカーが「排除された」という認識をもつ場面を減らすことができるだろう。インクルーシブな視点をデザインに活かすことは、ダイバーシティの実現に寄与するものと考えられる。

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ワークプレイスをインクルーシブに変えるオフィス家具

マイノリティのユーザーの使い勝手を考慮し、誰もが使いやすいようデザインされた製品事例として、インクルーシブなオフィス家具を紹介する。海外事例が先行しているが、国内でもインクルーシブデザインの手法が浸透しつつある。

Workagile社「Huddlebox®」

英国Workagile社が開発したモジュール式の座席「Huddlebox®」は、車椅子ユーザーや移動に不自由がある人も利用しやすい環境づくりが行える、インクルーシブデザインのオフィス家具だ。

ボックス型の座席を積み重ねることで、どんな空間や個人にもフレキシブルに対応。車椅子が無理なく空間に溶け込めるようにレイアウトすれば、車椅子ユーザーを端に追いやることなく、あらゆる人が気軽にコラボレーション可能な環境を構築できる。機能的でモダンであり、誰にとっても便利で美しい空間になることも大きな特徴だ。

(画像はWorkagile社のWebサイトより)

なお同社は、インクルーシブデザインのオフィスづくりには、下記の配慮が必要だとしている

・広い出入り口
・調節可能なテーブル
・低い位置にある照明スイッチ
・人間工学に基づいた椅子
・アクセスしやすいプラグソケット
・簡単に調節できるモニターアーム
・車椅子でアクセスできるミーティングブース

​​Nucraft Furniture社「Ascari Conference ​​」

アメリカNucraft Furniture社の「Ascari Conference​」は、見た目の美しさと機能性が特徴の会議用テーブルだ。オプションとして卓上、あるいはテーブルトップの脇に電源やワイヤレス充電の機能を追加できる。

(画像はNucraft Furniture社のWebサイトより)

会議室の電源はテーブルの中央や床下にあることが多く、車椅子ユーザーや障害のあるワーカーにとっては利用しにくい。Ascari Conferenceは手元に近い位置に電源機能を配置することで、マイノリティのユーザーがアクセスしやすく、また平均的なユーザーの使い勝手も向上するデザインを実現。2021年には、幅広い分野から優れた新製品を表彰する​​Best of NeoCon 2021の家具部門で銀賞を受賞している。

株式会社オカムラ「ウェルツ-EV」

大手オフィス家具メーカーのオカムラは2020年、オフィスの狭小空間でも想いのままに移動できる電動駆動付きチェア「ウェルツ-EV」を発売した。大型の車輪をユーザーの重心付近に配置することで、既存の電動車椅子よりも車輪の旋回半径が小さく、省スペースでの方向転換が可能。狭いオフィスでもゆとりをもって移動できる設計になっている。

 

(画像は株式会社オカムラのWebサイトより)

ウェルツ-EVは、一般的にオフィスで使用されている椅子と乖離しないデザインと座り心地を実現していることでも評価が高い。また、一般的な事務用デスクでも仕事がしやすいよう、幅はコンパクトに、アームレストにある操作スティックも高さを低くする工夫がされている。人と車椅子と働く場の共生をデザインで解決したことが高く評価され、2021年のグッドデザイン賞を受賞した。

こうしたインクルーシブデザインのオフィス家具が備わるオフィスでは、障害のあるワーカーはもちろん、下肢の機能が低下した高齢のワーカーもストレスなく働くことができるだろう。また、そのほかのワーカーも将来の働き方への不安が払拭できるのではないだろうか。

インクルーシブデザインの導入で、あらゆるワーカーが快適な職場に

これまで見過ごされてきたユーザーの課題に向き合うことで生まれた、インクルーシブな視点。これがデザインに革新をもたらし、新しいプロダクトやサービスの創出につながっている。あらゆるワーカーが快適に働けるワークプレイスの実現に向けて、将来的にはインクルーシブデザインのオフィス家具がスタンダードモデルとなることが期待される。

今後さらなる高齢化が見込まれる日本において、インクルーシブデザインの導入は多様な個が活躍する社会の実現へ向けた備えとなるだろう。

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この記事を書いた人

Kaori Isogawa ライター/翻訳者。ホームインテリアからオフィスデザインまで、ライフスタイル&ワークスタイルを中心に幅広くコンテンツを作成。外資勤務経験あり。



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