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テラスや縁側も!自然とつながる「半屋外空間」がオフィスに必要な理由

[July 05, 2022] BY Wataru Ito

オフィスでも活用される「半屋外空間」

オフィス建築では、屋外と屋内がコンクリートやガラスで明確に区切られているのが一般的だ。そんななか、「半屋外空間」を設けることで、あえて屋内外の境目を曖昧にしたデザインのオフィスが存在する。

半屋外空間とは「外」と「内」とをゆるやかにつなぐ中間的な領域のことで、具体的にはバルコニーやテラス、縁側などを指す。太陽の光やさわやかな風、音や匂いを感じ、リラックスできる場所として、住宅のデザインなどに広く取り入れられている。なかでも縁側は、そこに住む人だけではなく、家族以外の人と交流する「憩いの場」としても活用されてきた。では、なぜワークスペースであるオフィスに半屋外空間を設置するのだろうか。

近年ではテレワークが普及し、オフィスの価値を見つめ直す企業が増えている。わざわざ通いたくなるオフィスがどのようなものなのか、それを考える際のヒントが半屋外空間にあるのではないだろうか。本記事では、建築上の制約が多い中高層ビルの都市型オフィスと、自由な平面計画が可能な郊外型オフィスの事例を紹介しながら、半屋外空間に期待される役割と可能性を探りたい。

都市型オフィスの事例

中高層の都市型オフィスビルは、基本的には類似した構成のフロアを積み上げる構造になっている。半屋外空間は、建物外縁のバルコニーや屋上のテラスなどに限定され、設計の自由度は低いと言えるだろう。

ただ、こうした制約下でも、魅力的な半屋外空間を備えたオフィスビルが存在する。ここでは、グッドデザイン賞を受賞した3つの事例を紹介する。

1. KOJIMACHI TERRACE

縦糸と横糸を編んだような格子デザインの外観が印象的な、KOJIMACHI TERRACE。有限会社nendoと株式会社IKAWAYA建築設計がデザインを手掛け、2019年度グッドデザイン賞を受賞している。KOJIMACHI TERRACEでは、従来のオフィスビルに見られる硬質で無機質な印象を払拭すべく、様々な工夫が施されている。ワークプレイスに彩りを添えるのは、6つのフロアに設けられた「テラス」だ。

(画像は有限会社nendoのWebサイトより)

9階と10階には7mの樹木を植えており、樹木の上部には屋根を置かず、そのまま雨風が入ってくるデザインを採用。樹木の周りには一体型のベンチやテーブルを設置しており、人々が集う場となっているという。

関連記事:健康経営で注目されるオフィスの緑化。国内外の最新事例

2. 渋谷ソラスタ

東急不動産株式会社と清水建設株式会社が手掛けた渋谷ソラスタは、2019年度グッドデザイン賞を受賞した地上21階建、高さ約107mの超高層オフィスビルだ。

(画像は東急不動産株式会社「Green Work Style」のWebサイトより)

東急不動産は「Green Work Style」という働き方を提案しており、植物を取り入れたオフィス空間の整備を実践している。Green Work Styleでは、ストレスの軽減やアイデアの創出など、「緑」に期待される効果に注目。超高層ビルでは珍しく、すべてのオフィスフロアに長さ40mの「グリーンテラス」を設置し、手すりの外側に植栽ゾーンを設けることで、高所でも安心感のある空間を実現している。屋上にはテナント各社が利用できる「スカイテラス」があり、木々を眺めながら季節の移り変わりを感じられるスペースとなっている。

3. CIRCLES

CIRCLESは、三菱地所株式会社が都心部を中心に展開するコンパクトオフィスシリーズだ。谷尻誠氏と吉田愛氏が率いる建築設計事務所「SUPPOSE DESIGN OFFICE」がデザインを監修し、2020年度グッドデザイン賞を受賞している。成長企業を対象とする同シリーズは、「集まって働くこと」による生産性や創造性を促す空間づくりに特徴がある。

(画像はCIRCLES日本橋馬喰町のWebサイトより)

その工夫の一つが、コミュニケーションの誘発を目的に設けられた占有バルコニーだ。外界とつながった通常の「アウターバルコニー」だけではなく、屋内の窓辺スペースをバルコニー空間に見立てた「インナーバルコニー」を併設している点が新しい。屋内にいながら屋外の環境を感じられるインナーバルコニーは、休憩・集中スペースとして活用されており、屋上には入居企業間の交流をねらった共用テラスが設けられている。

郊外型オフィスの事例

次に、郊外型オフィスの事例を見てみたい。郊外では、テナントビルよりも自社ビルが一般的だ。また、都市部に比べて広い土地が手に入りやすく高層化の必要がないことから、設計の自由度が高い。豊かな自然を取り込んだ半屋外空間をつくれるところは、低層の郊外型オフィスならではの利点と言えるだろう。

1. えんがわオフィス

えんがわオフィスは、株式会社プラットイーズが2013年に開設したサテライトオフィスだ。同社は、映像コンテンツの放送・配信に関わるシステム開発などを手掛けており、本社は東京にある。

のどかな農村風景が広がる徳島県神山町に新たな拠点を構えるにあたって、地域へ溶け込むことを重視し、「町の人たちが気軽に立ち寄れるオフィス」を目指したという。築約90年の古民家を改装したえんがわオフィスは高く評価され、2014年に日本商環境デザイン協会(JCD)の「デザインアワード」で銀賞を、公益社団法人日本建築家協会(JIA)四国支部の「第1回 JIA四国建築賞2014」で優秀賞を受賞した。

(画像はえんがわオフィスのWebサイトより)

外壁をガラス張りにした母屋の周囲に縁側をめぐらせ、社員だけではなく地域住民もくつろげる交流の場となっている。実際に、地域ぐるみのイベントとして開催した七夕祭りでは、オフィス前の広場に屋台が出て、従業員と地域住民が浴衣姿で一緒に楽しんだという。縁側がコミュニケーションを育む場となっている様子がうかがえる。

関連記事:生産性向上も期待される「地方型サテライトオフィス」の動向と成功事例

2. ROKI Global Innovation Center

ROKI Global Innovation Center(通称、ROGIC)は、自動車エンジン用のフィルターなどの開発・製造を行う株式会社ROKIの研究開発施設だ。2017年に日本建築学会賞(作品)JIA日本建築大賞をダブル受賞している。

(画像は小堀哲夫建築設計事務所のWebサイトより)

ROGICは、静岡県浜松市内の豊かな自然が息づく場所に建設された。ガラスの曲面屋根が、棚田状に構成された4層のフロアをすっぽりと覆う構造だ。日射しは、この膜天井を通してやわらかな光に拡散され、建物内部を明るく照らす。大開口の引き戸を開け放てば、天竜川から抜ける心地よい風を取り込むことができ、ワークスペースそのものが巨大な半屋外空間となる。

三菱地所設計のR&D推進部によるインタビューのなかで、同施設を設計した小堀哲夫建築設計事務所の小堀氏は、「均質な空間というのは実は人にとって不快で、ムラのある自然に近い空間の方が心地よいのではないか」と考え、「天井高や明暗の違い、室温の差など、あえてムラ(不均質)をつくった」と語っている。ROGICではフリーアドレス制が導入され、従業員は自分が仕事のしやすい席で業務を行う。季節や時間帯によって、快適な場所を選べるデザインとなっている。

半屋外空間に期待される効果と可能性

紹介した事例からもわかるように、都市型オフィスと郊外型オフィスでは半屋外空間のつくり方に違いが見られる。

中高層の賃貸ビルを利用することが多い都市型オフィスでは、テラスやバルコニーで外とつながるが、ビルが隣接する環境下では丸見えの状態となり、かえってストレスを感じるケースもあるだろう。また、高所から見える景色に恐怖を覚える人もいる。そのため、目線の先に樹木を植えてワンクッション置くなど、都市ならではの工夫が求められる。

一方、都市にいるからこそ、外とのつながりがもたらす自然の気配や植物の存在に癒されることも多いはずだ。半屋外空間が生み出すちょっとした非日常感が、新たなアイデアの創出につながることもあるだろう。

低層の自社ビルを中心とした郊外型オフィスでは、周囲の豊かな自然をありのままに取り込めるため、光や風、鳥のさえずり、木々の匂いなどを存分に享受できる。とはいえ、単に外に向かって開け放てばよいわけではない。基本的に屋外環境は過酷でオフィスワークには適さないため、あくまでも屋外の「心地よさ」だけを取り込むのがデザインのポイントと言える。

郊外型オフィスの半屋外空間は、ときに地域とのコラボレーションを生み出す場ともなる。また、都市型と比べて自由度が高い分、快適性を考慮したデザインを採用でき、それが従業員のストレス軽減やモチベーションの向上につながる可能性も十分にある。

そして、今回取り上げた事例の多くが、コミュニケーションの活性化を意図している点にも注目したい。心地よい空間に人は自然と集まるもの。魅力的な半屋外空間は、社内コミュニケーションにおける課題の解決にも寄与し得る。従業員のウェルビーイングにもつながると思われる半屋外空間の可能性に、今後も注目していきたい。

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この記事を書いた人

Wataru Ito フリーランスのコピーライター。中小企業やBtoB企業を中心に、ライティングを通してブランディング、採用広報、販売促進をサポート。建築学科卒、建材メーカー勤務経験あり。



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