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テレワークで集中力を上げる方法

テレワーカーに多い悩みとして、コミュニケーションと並んであげられるのが、「仕事に集中できない」という問題だ。テレワーク時に集中力を上げるコツを、4つの軸に沿って紹介する。

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テレワーカーを悩ませる「仕事に集中できない」問題

パンデミックの影響を受け、日本国内でもテレワークが急速に普及した。国土交通省の「令和2年度テレワーク人口実態調査」を見ても、前年度に比べてテレワークの実施者は倍増している。また、サテライトオフィスの整備は進んでいるものの、実施者のうち約9割が主に自宅で仕事をしている様子もうかがえる。

テレワークでは、対面時と比べてコミュニケーションをとりにくいことがしばしば指摘される。そして、それと同等に多くのテレワーカーを悩ませるのが、「仕事に集中できない」という問題だ。株式会社イードが2020年11月、20~59歳の有職者4941名を対象にした調査でも、テレワークで困ること・不便なこととして仕事への集中をあげる人の割合が高くなった。

また、株式会社ネクストレベルが2021年1月、テレワーカー300名を対象に行った調査では、97.7%の人が在宅勤務中に仕事のモチベーションや集中が切れた経験を持つことがわかっている。その理由として、「ついスマホやテレビを見てしまう」「私生活とのメリハリがつきにくい」ことをあげる声が多く見られた。

そこで本稿では、テレワーク時に集中力を上げる方法を、「環境整備」「感覚刺激」「時間管理」「他者とのつながり」の4つの軸に沿って紹介する。

【環境整備】自宅の作業環境をチェックする

厚生労働省は、2021年3月にテレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を公表した。このガイドラインの最後には「自宅等においてテレワークを行う際の作業環境を確認するためのチェックリスト【労働者用】」が添付されており、そのすべての項目を満たすことが推奨されている。

ここでは、その中から集中力に影響すると思われる「作業場所」と「作業環境」に関するチェック項目を、以下に抜粋する。

1.作業場所やその周辺の状況について

・作業等を行うのに十分な空間が確保されているか
・無理のない姿勢で作業できるように、机、椅子や、ディスプレイ、キーボード、マウス等について適切に配置しているか
・作業中に転倒することがないよう整理整頓されているか
・その他事故を防止するための措置は講じられているか

2.作業環境の明るさや温度等について

・作業を行うのに支障ない十分な明るさがあるか
・作業の際に、窓の開閉や換気設備の活用により、空気の入れ換えを行っているか
・作業に適した温湿度への調整のために、冷房、暖房、通風等の適当な措置を講ずることができるか
・石油ストーブなどの燃焼器具を使用する時は、適切に換気・点検を行っているか
・作業に支障を及ぼすような騒音等がない状況となっているか

上記の項目は安全衛生を目的とするものだが、これらを満たす環境を整えることが集中力アップの第一歩と言える。まずは、自宅の作業環境をチェックした上で、改善が必要な項目について見直しを図りたい。

【感覚刺激】視覚・聴覚・嗅覚・触覚を使って脳を目覚めさせる

脳の覚醒状態を保ち、集中できる状態にするためには、「感覚刺激」が有効とされている。経済産業省「デジタルプラットフォーム構築事業」の一環で実施された2018年度の調査でも、適切な感覚刺激のあるオフィスのほうが集中を促すことがわかっている。 

ここでは、視覚、聴覚、嗅覚、触覚に分けて、それぞれのアプローチを紹介する。

1.視覚

集中して作業する上で、照明は重要な要素となる。照度については、厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」で、「ディスプレイを用いる場合のディスプレイ画面上における照度は 500 ルクス以下、書類上及びキーボード上における照度は 300 ルクス以上を目安とし、作業しやすい照度とすること」と示されている。

また、照度に加えて色温度も重要であり、集中して行う作業などには5000K前後の「昼白色」が適していると言われている。実際に、オフィスなどの照明は、この色温度帯に設計されていることが多い。

自宅の照明に、色温度の低い「電球色」や「温白色」を使用している場合、その照明下では集中しにくい可能性がある。リラックスする場所は「電球色」や「温白色」を使用し、仕事をする場所に「昼白色」の照明を用いれば、メリハリがついて気持ちも切り替えやすくなるだろう。エリア分けが難しい場合は、色温度を切り替えられる照明が便利だ。

また、視覚刺激として「緑視率」がメンタル面に与える影響も注目されている。緑視率とは「視野内に占める植物の割合」のことで、都市の緑化施策 などにも活用されている指標だ。観葉植物がオフィスワーカーのストレス軽減や生産性向上に有効であること示す研究結果や、最適な緑視率は10~15%とする報告も見られる。

加えて、オフィスの自席近くに自分が選んだ植物を置いて世話をすることが、ストレス緩和につながる可能性を示す研究もある。ストレスは集中力の維持にも影響するため、自宅でもデスクの近くに植物を置き、世話をしてみてはいかがだろうか。

2.聴覚

BGMが集中力にもたらす効果は人によって異なるが、ストレスの軽減には、高音質な「ハイレゾリューション音源」で「自然環境音」をかけることが有効との報告もある。集中する時間とリラックスする時間とでBGMを切り替え、メリハリをつけて集中力を高めるのも一つの手だ。

3.嗅覚

香りが集中力の向上や、気分の切り替えに役立つことはよく知られている。また、香りの種類だけでなく好みも影響すると言われている。ミントなど覚醒効果があるとされる香りの中から、自分の好みに合ったものを選び、仕事を始める前に嗅いでみるのもいいだろう。

4.触覚

冷たい水で顔を洗う、熱いおしぼりで手を拭くといった温感変化を伴う触覚刺激も、集中力が低下したときのリフレッシュに効果的だ。プロ野球の試合で選手がガムを噛む姿が見られるが、ガムの咀嚼が眠気の防止や集中力アップに役立つという研究報告もある。

【時間管理】時間配分を意識する

次に紹介するのは、なんとなく作業を続けるのではなく、時間配分を意識して集中力を高める方法だ。

1.ポモドーロ・テクニック

集中力を持続させる方法としては、イタリア人の起業家・作家であるフランチェスコ・シリロ氏が考案した「ポモドーロ・テクニック 」がよく知られている。25分の集中と5分の休憩を繰り返す方法で、定期的に休憩を挟むことにより、集中できる時間が長くなるという。

「25分+5分」の時間配分に科学的な根拠はなく、シリロ氏の経験値とされている。最適なサイクルは個人によって異なるため、まずは「25分+5分」から始めて、自分のリズムやタスクに合った時間配分になるよう調整したい。

実践にあたっては、タイマーアプリやタイマー動画を使う方法もある。Youtubeに投稿されているポモドーロ・テクニック用動画を活用するのも便利だ。

2.作業用動画

1~3時間程度の作業用動画も多数公開されている。環境映像にBGMをつけたもののほか、勉強や作業をしている様子を映した動画も人気がある。例えば、Youtubeで公開されている「【作業用】キティといっしょに1時間お勉強したりお仕事したりする動画」は、株式会社サンリオのキャラクターであるハローキティがパソコンで1時間作業する動画だが、公開から1年で再生回数が40万回を超えている。

【他者とのつながり】他者の存在を感じて意欲を高める

前述の作業用動画は、誰かと一緒に作業をしている気分を味わうことで集中力を高めるものだった。それに対し、リアルタイムで他者とつながり、作業意欲を高める方法も人気がある。例えば、コロナ禍で気軽に会えない受験生の間では、ウェブ会議ツールで友達とつながり、休憩時間を決めてそれまで無言で集中する勉強法が実践されているという。

様々なサービスやアプリの中から、一部を以下に紹介する。

1.作業通話

Discord アメリカ発のビデオ通話・音声通話・テキストチャット。もともとはオンラインゲームのプレイヤー向けコミュニケーションツールだったが、現在はゲーム以外の作業通話にも利用されている。

mocri株式会社ミクシィが提供する作業通話専用アプリ。「集中モード」機能で集中する時間と休憩時間を設定すれば、ポモドーロ・テクニックにも活用できる。

2.作業配信

00:00 Studio(フォーゼロスタジオ)クリエイターが、自身の作業状況を動画で配信できるサービス。自分の作業状況を他者に見られることで集中を促すのが特徴だ。

3. リモート・コワーキング

作業通話や作業配信サービスでは、プラットフォーマーはあくまで場を提供するだけで、セッションの実施は利用者に委ねられている。これに対して、セッションの開設とファシリテーションを含めた運用を行うサービスも始まっている。

Cavedayもともとは日曜日に集まり、一日集中して作業するリアルのイベントだったが、コロナ禍でオンラインに移行して急速に参加者が増えたようだ。コーチングサービスも提供している。

Focusmate1対1の作業ペアをマッチングするサービス。作業開始時に、互いに「これを終わらせます」と宣言し、50分間黙々と取り組む。宣言の達成に向け、集中力と効率を高めることを特徴としている。

企業レベルでの取り組みにも期待

テレワークで集中力を高める具体策を、4つの軸に沿って紹介した。これらのほかに、スマホ禁止アプリ などの集中支援サービスもあり、簡単な体操などで身体を動かすことも有効とされている。例えば、国立長寿医療研究センターと金城大学が作成した、「健康増進のためのテレワーク体操<どこでもHEPOP>」も参考になる。

集中できず生産性が上がらない状態が続くと、それがストレスとなってさらに集中力が低下するという悪循環も招きかねない。まずは手軽な方法の中から、自分に合うものを見つけてみてはいかがだろうか。

クラウドストレージサービスを提供するDropbox が実施した調査では、「集中を失うことで、米国企業の時間と給与の3分の1 近くが失われている」ことが示されている。従業員が集中できないことは、企業にとってそれだけ大きな損失となるのだ。今回は個人にできる取り組みを紹介したが、チームや企業レベルでの施策にも引き続き注目していきたい。

この記事を書いた人:Fusako Hirabayashi

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