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今さら聞けない電子署名の基礎知識 ー 概要とサービス事例紹介

[August 31, 2021] BY Fusako Hirabayashi

テレワーク推進で広がるハンコレス

テレワークが推進される中、書類に押印するために出社の必要が生じた企業も多かったことから、押印業務の見直しが進められている。社内文書や行政への申請書類については、押印そのものの廃止も進められているが、契約書などに関しては電子署名の利用が急速に広がっている。

例えば、日本組織内弁護士協会の資料で紹介されている、ロンドンを拠点とするグローバル法律事務所内のデータによれば、クラウド型電子署名を利用・締結した契約書などは2020年3月以降に急増し、2020年4月分だけで2020年累計数の50%超に及んでいる。

また、株式会社矢野経済研究所が発表した「電子契約サービス市場に関する調査」では、2019年の国内電子契約サービスの市場規模は前年比74.4%増の68億円と推計しており、2024年にはその4倍に成長すると予測している。電子契約がすべて電子署名を使用するわけではないが、電子契約サービスの成長に伴ってハンコレスが進み、電子署名の利用も拡大することは間違いないだろう。

本稿では、電子署名の概要に触れ、電子署名の国内外の利用状況や代表的なサービスを紹介する。

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電子署名とは

電子署名とは、電子文書類に対する署名のことで、紙文書における手書きの署名や押印に相当する。電子署名及び認証業務に関する法律(通称、電子署名法)」では、電子署名を下記のように定義している。重要なのは太字にした箇所で、本人が署名したことと、改変が行われていないかが確認できることが要件となっている。

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。

一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。

一般的に現在の電子署名は、一定の暗号強度を備えた公開鍵暗号方式が採用されている。また、誰の電子署名を用いるかによって「当事者型」と「事業者型」の2つに分けられる。

・当事者型
本人の署名鍵を用いる方法。代表的な利用例としては、マイナンバーカードによる公的個人認証サービスがある。国税電子申告・納税システム(e-Tax)などの本人確認の際、使用した経験を持つ人も少なくないだろう。

・事業者型
サービス提供事業者の署名鍵を用いる方法。クラウド型電子契約サービスの多くが事業者型に相当する。

なお、「電子署名」と類似する言葉に「電子サイン」がある。電子サインには依拠する法律や技術はなく、電子署名よりも広義な意味で使われることが多い。ここでは、電子署名法に基づく電子署名について取り上げる。

企業における電子署名の利用状況

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)と株式会社アイ・ティ・アールが、国内企業981社のIT/情報セキュリティ責任者を対象に、2021年1月に実施した「企業IT利活用動向調査2021」によれば、電子契約の利用企業は2020年7月調査の41.5%から67.2%と大幅に増加している。これは、コロナ禍におけるテレワーク推進の影響であろう。

電子契約の利用状況
(画像は
JIPDECのNews Releaseより)

電子契約を利用し、電子署名を採用している企業は約50%にのぼる。また、電子契約サービス事業者の電子署名を採用(事業者型を採用)している企業が、契約当事者の電子署名を採用(当事者型を採用)している企業よりも若干ではあるが多いことがわかる。

個人が認証局から署名鍵の交付を受ける当事者型よりも、サービス提供事業者の署名鍵を用いる事業者型のほうが導入しやすいが、電子署名法における位置付けが不明確という指摘がなされていた。

そこで、2020年9月に総務省・法務省・経済産業省が連名で「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&Aを公表し、事業者型の電子署名に関する見解を明らかにした。これにより、利用者の意思に基づいていることが明らかならば電子署名法の要件を満たすと示されたことで、事業者型の導入が加速したものと推測される。

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自治体による事業者型電子署名の実証実験 

2021年1月に地方自治法施行規則が改正され、地方自治体が契約を結ぶ際の電子署名の利用規制が大きく緩和された。これを契機とした事業者側からの呼び掛けもあり、多くの自治体で事業者型電子署名を用いるクラウド型電子契約サービスの実証実験が開始されている。

例えば東京都は、デジタル化などの手段により押印を不要とする「はんこレス」の取り組みの一環として、電子契約サービスを提供する民間企業と連携し、電子署名の実証実験を実施している。

期間は、2021年2月~2022年3月の予定。提携企業は、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社、セコムトラストシステムズ株式会社、弁護士ドットコム株式会社の3社だ。都内での少額物品の購入契約や、都と区市町村・企業などとの間で締結する契約、行政手続きにおける都民からの申請などを対象とし、事業者の負担軽減、都庁内部の事務効率化の状況などを検証する。

このほか、佐賀県福岡県福岡市兵庫県神戸市など多数の自治体が実証実験を開始している。

海外における電子署名の状況

電子契約に関する国際的な定義は確立されておらず、電子署名についても個別に法律が制定されている。ここでは、EU、アメリカ、中国の状況を紹介する。

①EU
EU圏内市場での電子商取引を促進するため、電子署名を含む各種認証手段の共通規則としてeIDAS(electronic IDentification and Authentication Services)を制定。金融・不動産・会計などの分野を中心に、認証サービスの利用が拡大している。

②アメリカ
電子署名法が連邦法および州法として制定されている。MarketsandMarketsの市場調査レポートによれば 、アメリカの電子署名の市場規模は、2020年の28億米ドルから2026年までに141億米ドルに成長すると予測されている。

③中国
2005年に「中華人民共和国電子署名法」を施行。2019年には、それまでは適用されない旨が規定されていた「土地、家屋等の不動産権益の譲渡に係る文書」などにも、電子署名の利用範囲を拡大する改正が行われている。

国内外の代表的な電子署名サービス

では、具体的にどのようなサービスが展開されているのだろうか。国内と海外に分け、代表的な例を紹介する。

1.国内におけるサービス事例

弁護士ドットコム株式会社
サービス名「クラウドサイン」。電子契約のプラットフォームとして整備されており、弁護士が監修していることもあって信頼感が高い。国内の電子契約サービス利用企業の約80%が利用している。最近ではトヨタ自動車株式会社が、AIにより契約管理業務を自動化した「クラウドサインAI」を導入することを発表した。

GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社
サービス名「電子印鑑GMOサイン」。押印フローの電子化が容易で、そうした運用面での使いやすさが評価されている。また同社は、ルート認証局(電子証明書の信頼性の起点となり最上位に位置する認証局)であり、SSLサーバ証明書の国内シェアNo.1として信頼性の高さを謳っている。
※ 2021年1月時点 英Netcraft社「SSL Survey by Hosting Country」有償SSL認証局ルート別

セコムトラストシステムズ株式会社
サービス名「セコムパスポート for G-ID」。電子入札、電子申請、電子納税などに利用可能な電子証明書の発行サービスを提供している。

2.海外におけるサービス事例

DocuSign,inc.
サービス名「DocuSign eSignature」。カリフォルニア州サンフランシスコに本社を置くアメリカの企業で、電子契約サービスのパイオニアである。ドキュサイン・ジャパン株式会社によると、DocuSign eSignatureは世界180カ国100万社以上で利用されている。

Adobe inc.
サービス名「Adobe Sign 」。Adobe Acrobatなどで知られる、カリフォルニア州サンノゼに本社を置くアメリカの企業。Adobe Signは、電子署名を含む幅広い電子サインを提供するサービスであり、30以上の言語に対応している。同社によれば、80億件以上の取り引き実績があるという。

テレワークに加え、ペーパーレス化の促進にも期待

Adobe inc.の日本法人であるアドビ株式会社が、過去1年間に電子サインを1回以上使用したことがある18歳以上の男女計4,662名を対象に実施したグローバル調査では、「日本は電子サインの安全性への関心が他国に比べて極めて高い」という結果が得られている。安全性に対する理解の促進が普及の鍵となるだろう。

押印の代わりに電子署名が認められれば、紙の文書の保管が不要となり、ペーパーレス化の原動力となることも期待できる。フレキシブルな働き方に大きな影響を与えるであろう電子署名の動向に、今後も注視していきたい。

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この記事を書いた人

Fusako Hirabayashi IT系大手企業で研究開発、新規事業立ち上げなどの業務に携わりながら働き方とそれを支える環境に関心を持ち、裁量労働制の導入検討委員を担当する。宅地建物取引士資格を取得し、不動産仲介業務にも従事。現在は、フリーランスのライターとして、新しいワークスタイルやワークプレイスについて発信している。



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