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瞑想ルームにデジタル森林浴も。社員のウェルビーイングを促すオフィスの新潮流

ウェルビーイングが重視されるようになり、オフィスに要素を取り込む企業も出てきている。先進的な取り組みを行う企業事例と、ウェルビーイング向上に役立つオフィス向け製品を紹介する。

ウェルビーイングの重要性を経営者の約7割が実感

働く場所の多様化とともに、オフィスのあり方も変わってきている。働きやすいオフィスづくりを進めるうえで、近年、特に重要性が増しているのが社員の「ウェルビーイング」だ。ウェルビーイングとは身体的・精神的・社会的に良好で幸福な状態を表す概念のこと。

株式会社UPDATERが社員数100名以上の企業の経営者・役員103名を対象に行った「『ウェルビーイング』に対する意識調査」によると、経営者の70.9%がウェルビーイングの重要性を実感していた。その理由としては、「良い人材の確保のため」や「生産性の向上にも貢献すると思う」が挙げられている。

ただし、ウェルビーイングへの実際の取り組みについては、「積極的に取り組んでいる」が29.1%、「やや取り組んでいる」が34.0%である一方、「あまり取り組んでいない」が15.5%、「全く取り組んでいない」が21.4%であった。重要だとわかりながらも実施できていない企業が一定数あることがわかる。

取り組みができていない理由としては、「自社に合う取り組みがわからない」が39.5%と最も多く、次が「ウェルビーイングを実現する具体的なサービスがわからない」28.9%であり、会社として実際に何に取り組めばよいのかがわからないという課題があるようだ。

そこで本記事では、オフィスづくりに社員のウェルビーイングの観点を取り入れた企業の事例と、ウェルビーイング向上に役立つオフィス向け製品を紹介する。

社員のウェルビーイングを促すオフィス事例

実際に社員のウェルビーイングを重視したオフィスづくりを行っている企業では、具体的にどのような環境を整備しているのだろうか。まずは先進的な取り組みを行っている企業のオフィス事例を紹介したい。

【オフィス事例①】NTTアーバンソリューションズ株式会社・NTT都市開発株式会社「瞑想ルーム」

NTTアーバンソリューションズNTT都市開発は、2022年5月に本社のある秋葉原UDX6階に実験的ライブオフィス「未来のオフィス 4×SCENE(フォーシーン)」を開設した。同オフィスはハイブリッドワークの定着を受け、それぞれに目的をもって出社する多様な社員をデジタル技術で支え、パフォーマンスの向上とウェルビーイングの実現をめざしている。

ウェルビーイングを高める施策としては、日本初と謳う「瞑想ルーム」を設置。導入したのはパナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社の「(MU)ROOM(ムルーム)」という瞑想体験モジュールである。もともとは宿泊事業者向けに開発されたもので、実際に「ホテル アンテルーム京都」で効果検証が行われている。同オフィスが導入したのは、これをオフィス向けに改良したものだ。

瞑想ルームは1人用の個室で、室内には何もない空間が広がる。中に入ると、瞑想になじみのない人でも瞑想状態に入れるよう、瞑想の方法を説明するガイダンス音声が流れる仕組みだ。また、照明の調光・調色、空間音響、香りが変化し、さらにミストが発生して、リラックスできる空間を作り出している。連動するデバイスを使用すれば、心拍データなどから「どれくらい瞑想に没入できたか」がわかる瞑想スコア判定も可能だ。

画像はNTT都市開発株式会社のWebサイトより

瞑想ルームを利用することで、常に緊張感をもって働いている社員であっても一時的に仕事モードをオフにすることができる。気持ちを切り替える時間をもつことで、社員のリフレッシュと集中力の向上が期待されている。

また同オフィスは、ワーカーの働く環境やスケジュールから、出社やリフレッシュのタイミングをレコメンドする機能を備えていることもひとつの特徴だ。例えば「明日、Bさん、Cさんが出社します」というように、チームのメンバーの出社タイミングを知らせたり、個人のバイタルデータからストレス度合いをチェックして「ウォーキングデスクを使って運動しませんか」と提案したりしてくれる。さらにこうした社員の利用データを解析し、ブラッシュアップし続けていく‟ライブオフィス”となっている。

 【オフィス事例②】日本マイクロソフト株式会社「アクティビティルーム」「デジタルデトックスルーム」

日本マイクロソフトは、2022年6月末に品川本社オフィスの全面改修を完了した。このプロジェクトは、生産性・創造性のさらなる向上と、ウェルビーイングを意識した快適な職場環境をめざしたもので、ハイブリッドワークにも対応したオフィスとなっている。

その中で、特にウェルビーイングを意識して設けられたのが「アクティビティルーム」と「デジタルデトックスルーム」だ。アクティビティルームでは、フィットネスバイクや懸垂マシンが置いてあり、在宅勤務が続くことで生じる運動不足の解消や、気分転換に活用できる。一方、デジタルデトックスルームには、瞑想ルームや仮眠スペースが設置してあり、疲労回復やマインドセットの切り替えなどに利用されている。

画像は日本マイクロソフト株式会社のWebサイトより

このほか、自然に触れることでストレスを軽減し生産性を高めるバイオフィリア効果を狙い、オフィス面積の1%に植物を配置。従業員の健康とウェルビーイングを高めるさまざまな仕掛けを取り入れたオフィスを実現している

ウェルビーイング向上に役立つオフィス向け製品

ここまで、オフィス開設や移転時にウェルビーイングの要素を取り入れた企業事例を見てきたが、近年、大規模な改修工事を必要としないオフィス向けの製品も登場している。その中からオフィスの一室を活用できる空間型VR(仮想現実)と、後付け工事で設置可能なリチャージ空間を紹介する。

【製品紹介①】デジタル森林浴を実現する空間型VR「uralaa」(フォレストデジタル株式会社)

テクノロジーでウェルビーイングの実現をめざすフォレストデジタルが提供する空間型VR「uralaa(うらら)」は、部屋の壁一面に自然風景を映し出し、没入感のある自然体験を実現する。映像に加えマルチサウンド、木々の香り、風の効果を用いて、よりリアルな森林浴体験を可能としている。

uralaaを常設する「TOKIWA PARK by uralaa」(画像はフォレストデジタル株式会社のプレスリリースより)

映し出す映像はスマホで簡単に選択が可能。北海道、屋久島、西表島などさまざまな地域の自然風景が100シーン以上用意されており、森林浴だけでなく焚き火の映像などもある。なお、uralaaを活用した共同研究では、デジタル森林浴に生理・心理的な疲労回復効果があることが確認されている。利用者の副交感神経の上昇や心拍数の低下、気分の改善が認められており、オフィスに導入すれば社員の心身の疲労回復やメンタルヘルスの改善に期待がもてるだろう。

2022年3月には、三菱地所株式会社によるスタートアップ向けサービスオフィス「TOKIWA BRIDGE」内にuralaaを常設する「TOKIWA PARK by uralaa」がオープンした。同施設の利用者はuralaaで映し出された自然風景のなかでPCワークや雑談、リラックスなど自由に過ごすことができる。

三菱地所 xTECH運営部の岩本祐介氏は、同製品について「五感を刺激する没入自然空間uralaaの中にいると、いつもとは違うアイデア、コミュニケーションが生まれます。1人でリラックスして心を整える時間を設ける、穏やかな気持ちで仲間とディスカッションをすると声のトーンも思考回路もいつもと変わります」とコメントしている。

【製品紹介②】オフィスにリチャージ空間をつくる「SWiTCH SPOT」(パナソニック株式会社 エレクトリックワークス社)

パナソニック エレクトリックワークス社が提供する「SWiTCH SPOT(スイッチスポット)」は、社員の気分転換を促すソリューション空間だ。上記で紹介した「瞑想ルーム」と同様に、仕事の合間に短時間の気分転換を行うことで、メリハリのある働き方を促進する。

worXlabに設置された「SWiTCH SPOT」(画像はパナソニック株式会社のWebサイトより)

空間内は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感を刺激するさまざまな要素が含まれている。床材・天井素材には温かみのある木質素材を採用。アロマの香りや、木洩れ日を映し出す映像、森林効果を期待した植栽、鳥のさえずりを奏でるハイレゾ自然音、不規則にゆらぐ水蒸気による焚き火(模擬炎)などが組み込まれている。オフィスのサイズなどに合わせてカスタマイズが可能で、映像の内容も変更できる。

オフィス内の人の行き交う場所に設置すれば、普段あまり交流のない部署に所属する社員との出会いの場の創出にもつながるだろう。偶発的な出会いや雑談により、組織力が強化されたり革新的なアイデアが生まれたりすることも期待される。

同社は2020年12月、「『働く』を実験する」をテーマにしたライブオフィス「worXlab(ワークスラボ)」をパナソニック東京汐留ビルに開設した。いきいきと健やかに働けるウェルネス環境を提供し続けるアップデート型のワークプレイス空間として、さまざまなシステムを導入し実証実験を行っている。事前に申し込めば、worXlabに導入されたSWiTCH SPOTを実際に体験することも可能だ。

人材確保のためにも、オフィスにウェルビーイングの観点を

少子高齢化が深刻化し、さまざまな業界で人材不足が叫ばれている。企業が社員のウェルビーイング向上に取り組み、社員の満足度を上げることは、今や自社の事業を維持していくために避けては通れない喫緊の課題といえる。また、ハイブリッドワークの普及にともない、オフィスは従来の「毎日、通勤して業務を行う場所」から「働きやすく通いたくなる場所」へと変化を求められている。

本記事ではオフィスリニューアル時にウェルビーイングの観点を取り入れた企業事例と、大規模な改修工事を必要としない製品を紹介した。これらの例を参考に、ウェルビーイングの観点からオフィスの環境改善を考えてみてはいかがだろうか。