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サステナブルなオフィス家具で、環境に配慮したワークプレイスを実現!

オフィス空間の大半を占めるオフィス家具をサステナブルな製品に変えることで、環境負荷の軽減に貢献できる。本記事では、国内外の家具メーカーが提供するサステナブルなオフィス家具を紹介する。

オフィス家具にこそ求められるサステナブルな視点

サステナビリティへの関心の高まりとともに、ワークプレイスの構築においても、その価値が重視されるようになっている。なかでもオフィス家具は、耐久性の観点からプラスチックや化学繊維が多く使用されており、その廃棄は環境に負荷を与えるものだ。こうした背景から、オフィス家具を開発・製造する企業は、こぞって環境負荷の少ないサステナブルなオフィス家具づくりを始めている。

ワークスタイルの変化に合わせてワークプレイスを再構築する企業が増えているが、オフィス家具の入れ替えにあたり、サステナブルなオフィス家具を導入すれば、サステナビリティ経営やSDGsへの取り組みにつなげることができる。

本記事では、環境に配慮したワークプレイスを実現するためのサステナブルなオフィス家具について、国内外の製品を取り上げ、どのような観点で開発・製造が行われているのかを紹介したい。

国内外の家具メーカーが提供する、サステナブルなオフィス家具

サステナブルなオフィス家具には、環境に配慮した素材を用いる、修理や部品交換が可能なデザインにするなど、さまざまなアプローチがある。ここでは、国内外の家具メーカー5社が提供する製品とそのサステナブルな取り組みについてみていきたい。

1. 廃漁網を家具用の張地に再生した「Re:net(リネット)」(株式会社オカムラ)

オフィス家具メーカーのオカムラは、オフィス家具の製造に資源循環の輪を生み出すという視点から、リサイクル素材「Re:net」を開発した。海洋プラスチックごみの大きな原因のひとつである廃漁網をリサイクルし、家具のパーツとして生まれ変わらせるという取り組みだ。


Re:netの原料となる廃漁網(画像は株式会社オカムラのWebサイトより)

漁網は定期的に交換する消耗品であるが、海水の塩分を含み嵩も膨らむことから、使用後の扱いが難しい。オカムラは、この難物である廃漁網を回収して再資源化していた株式会社リファインバースグループと協業し、オフィス家具の張地にできる生地を開発した。

家具に用いることができるような強度をもち、かつ柔らかなテクスチャーの生地に仕上げるのは困難を極めたという。試行錯誤を繰り返し、廃漁網から製造した糸とペットボトルからできた再生PET糸を掛け合わせることで、家具用張地「Re:net」を完成させた。


Re:netを使用したオフィスチェア(画像は株式会社オカムラのWebサイトより)

Re:netを使用したオフィス家具を使用することで、海に流出する廃漁網の減少に貢献できる。また、ありし日の漁網をイメージさせる目の粗い編み柄と色味が、見た目にも美しい製品に仕上がっている。

2. デザインや機能性はそのままにサステナブルになった「アーロンチェア」(Herman Miller)

世界的な家具メーカーであるアメリカのHerman Millerも、サステナブルな家具づくりに取り組んでいる。人間工学に基づいて約30年前に設計され、同社のアイコニックな商品のひとつでもある「アーロンチェア」は、デザインや機能性はそのままに、50%以上にリサイクル素材が使用されている。


座り心地のよさとムダのないデザインで根強い人気を誇るアーロンチェア(画像はHerman MillerのWebサイトより)

近年、新たに海洋プラスチックを原料とする取り組みも始まり、これにより毎年150トン以上のプラスチックが生態系から回収されているという。全社的には、年間約326トンの海洋プラスチックを再利用しており、これはなんとペットボトル3200万本分に相当する。


海洋プラスチックを再生したプラスチックが多くの製品やパッケージに使用されている(画像はHerman MillerのWebサイトより)

身体を包み込み疲れにくいチェアとして、多くのワーカーから支持を得るアーロンチェア。環境にも優しい製品となったことで、オフィスチェア採用の後押しとなりそうだ。

3. 地元の木材を活用し、脱炭素化と地域貢献も可能とする「Econifa(エコニファ)」(株式会社イトーキ)

イトーキでは、森林の循環とCO2削減を実現する木材を用いた「Econifa」というシリーズを展開している。Econifaは間伐材を使用することで、残された木の成長を促してCO2吸収量の増加に貢献するとともに、木材利用によるCO2固定量の増加にも貢献できる製品だ。


画像は株式会社イトーキのWebサイトより

デスクやチェアといった単体家具から、ワーキングブースやラウンジ家具、内装材、屋外ベンチまでそのラインナップは幅広い。また、国内外のデザイナーの手がけた洗練されたデザインをテンプレート化しており、日本全国の好みの産地の木が使用できるところも特徴だ。地元産の木材を使用すれば、地域の林業振興への貢献にもつながる。


木材を利用したパーティション一体型ワーキングブース(画像は株式会社イトーキのWebサイトより)

オフィス家具はプラスチックやナイロンなどの化学材料で構成されることが多いが、天然木から生まれたオフィス家具は、どれひとつとして同じものはなく、その豊かな表情が深い味わいと癒しをもたらしてくれる。循環型社会の実現へ向けた取り組みになるとともに、社員のウェルビーイングへの貢献になることも期待できる。

4. 再生可能な竹製家具でハイエンドなオフィスデザインを実現する「Bamboo オフィスコレクション」(Greenington)

竹製家具を製造・販売するアメリカの Greenington社では、デスクやシェルフを中心としたオフィスコレクションを提供している。竹は再生可能な素材であり、木材よりも短期間で急速に成長することから、同社は竹を「地球上で最も持続可能性の高い素材」と説明している。


天板が竹製の電動式ハイローデスク。メモリー機能で好みの高さを記憶させられる(画像はGreeningtonのWebサイトより)

Greenington 社の家具の特徴は、美しいデザインと熟練の職人技による品質の高さにある。
近年、座りっぱなし防止のためにオフィスへの導入が増えているハイローデスクも、同社のものは独自の製法でパネル化された竹の天板が美しく、ハイエンドな空間を演出してくれる。

5. オフィス家具の寿命を伸ばすことでサスティナビリティに貢献する「Co・S・M・Oコンセプト」(コクヨ株式会社)

コクヨは廃棄を減らすことに着眼点を置き、末永く愛用できるシステム「Co・S・M・Oコンセプト」を開発した。同社が製造する複数のシリーズをプラットフォーム化し、必要に応じて家具の組み換えや部品の交換が行えるシステムだ。

オフィス家具ならではの強度を生かし、構造体はそのまま活用しながら、デザインや機能ユニットを交換することで、トレンドやニーズに合ったオフィス家具にアップデートすることができる。


画像はコクヨ株式会社のWebサイトより

Co・S・M・Oコンセプトを採用した製品では、構造体は長く活用できる耐久性をめざし、各ユニットは環境への配慮を高めた設計が行われている。さらに、各ユニットの軽量化や最小化により、物流時のCO2低減にも貢献しているという。

オフィス家具を「合わなくなったら、買い替える」から「合わなくなったら、組み替える」という思考にギアチェンジを促す、新たなアプローチだ。

リユースや寄附で資源循環に貢献するという選択肢も

ここまで紹介してきたように、オフィス家具メーカーは、「どのようにつくるのか」「どのように使われるのか」「どのように廃棄されるのか」を意識したプロダクトの開発・製造を始めている。「どのように」を考え抜いた製品の製造過程を知ることは、ユーザーの私たちに学びを与えてくれる。

一方、こうしたサステナブルなオフィス家具は、導入にそれなりのコストが必要になる。より低コストでサステナブルなワークプレイスを構築するには、リユースを活用するというのもひとつの手段だ。

賃貸オフィスの仲介業を手掛ける株式会社サンエスコーポレーションでは、オフィス家具のリユース「もったいないオフィスドットコム」を運営している。オフィス移転や内装工事などで不要になった美品のオフィス家具を無料で引き取り、もったいないオフィス家具 資源循環パートナーに登録した企業に無料で提供するサービスだ。

また、先に挙げたイトーキもNX商事株式会社との協働により、リニューアルや移転などで⾏き場のなくなった、まだ使⽤可能なオフィス家具をカンボジアへ寄付するマッチングを実施している

オフィスの資源循環に貢献するこのようなシステムを活用することも、サステナブルなワークプレイス構築の一環と言えるだろう。

この記事を書いた人:Etsuko Murakami